Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

井上夢人『クリスマスの四人』  ★★☆

クリスマスの4人
クリスマスの4人
井上 夢人

「いや、罪の重さが――」
 ふん、と塚本は鼻を鳴らした。
「重いとか軽いとかじゃないんだよ」
 僕は道路の向こうへ目をやった。数メートル先の路上に、男が倒れている。
「あの人のことは、どうでもいいのか?」
「どうでもいいなんて言ってないだろう。でも、死んじまったものはどうにもならない。悪いことをしたと思うよ。でも、謝ってなにが変わるんだよ」


 この人の本読みやすすぎてどうしたらいいのかいい加減わからないね。全然時間が掛からない。このド派手な表紙には辟易してしまうけど……意外にも新しいんだな、この本。
 1970年のクリスマスの夜、須田潤次、塚本譲、橋爪絹枝、番場百合子の四人は塚本の車でドライブしていた。四人がマリファナを吸い、無免許の百合子が運転していた時、見通しの良い道なのにいきなり男が出てきて彼を轢いてしまった。ちぐはぐな身なりをした彼はなぜかポケットに200万円を所持。犯罪者となりたくないがために、四人は死体を遺棄し、何もなかったことにしようとしたのだが……。
 1970、80、90、2000年と十年毎に四人は顔を合わせ、その度に事件に関連して不可解なことが起こる。あらすじだけ弟に話したら「映画のラストサマーみたいだね」と言われた。確かに。でもこれはホラーではないし、共犯者の四人が誰かに襲われるなんてこともありません。
 四つの話に分かれており、四人全員が語り手となる。三十年もの長い間、もやもやを抱えているのはさぞかし苦しいだろう。人一人殺したのだから、そんなんじゃ甘いかもしれないけどね。

 

  普通にミステリだと思っていたら最後にタイムマシン出てきちゃった! SFストーリーでした。2000年、四人が集まった時、あいつそのものの塚本の容貌に驚いたのは、あの日に轢いた人が、タイムトラベルした塚本だったから。喫茶店で話しかけてきたのも、塚本。死んでいた監督があいつの服装だったのは、真っ裸でタイムトラベルした塚本がトイレの中で死んでいた(心臓が弱い監督は塚本の出現に驚いて心臓麻痺したの?)監督の服を全て奪ったから。二百万も監督が持っていたもの。
 いやー全てが繋がったね。お見事!