Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

貫井徳郎『プリズム』  ★★★

プリズム
プリズム
貫井 徳郎

 真っ白で天使のような山浦先生を見るとあたしは、自分の醜さを否応なく思い知らされる。山浦先生のような愛すべき人を鬱陶しいと感じる自分の心が、ひたすら醜悪に思える。あたしは容姿はもちろんのこと、性格も山浦先生より劣っているのだ。


 先輩に貫井作品どれがお勧めですか? と訪ねたら本書と『慟哭』を推されたので。確かによかったさ。でも、もやもやが残るのではっきりすっきりを求める人には向かないかと。私もその一人なんですけれど。誰かお願いだから真実を教えてください。どれももっともらしく思えたんだよ。
 小学校の女性教師が自宅で死体となって発見された。彼女の同僚が容疑者として浮かび上がり、事件は容易に解決を迎えるかと思われたが……。万華鏡の如く変化する事件の様相、幾重にも繰り返される推理の構築と崩壊。究極の推理ゲームの果てに広がる瞠目の地平とは?『慟哭』の作者が本格ミステリの極限に挑んで話題を呼んだ衝撃の問題作。(Amazon
 構成がとても素晴らしいので、いつものようにあらすじを書いてしまうとネタバレになっちゃう。知ってて読むのと知らないで読むのとでは全然驚き度が違うからな、特にこれは。てっきり短編集かと思いましたことよ……。
 貫井さんははじめてだったんだけど、随分読みやすい文章を書かれるのですね。読書に疲れた時でもすんなり頭に入ってくる。麻耶や京極や森だと、こうはいかない。デビュー作らしい『慟哭』も借りてみよう。

 

  一章の主人公は小学生の男の子、彼が疑うのはミツコ先生の同僚・桜井先生。小学生らしからぬ理路整然とした推理を組み立て、これで終わり? 解決したの? と思いきや、二章の主人公は桜井先生その人。おいおいおい。彼女が犯人としたのは、美津子と昔付き合っていた男性・井筒。彼はその推理を聞かされて、自分が犯人ではないと知ってるから更に真相解明に乗り出す。すると出てきたのは、美津子と不倫関係にあった、美津子の受け持っていたクラスの男子児童の親。も、もしかしてとここら辺で嫌な予感。ま、ずばりその通り、男子児童ってのは一章の男の子だったわけです。ってことは……お父さんが次に疑うのは……やっぱり自分の息子かオイ! ループしてしまったわけ。それにしても、息子疑うか……? 陥れるためだけに、殺人まで犯すような息子なんですか。
 三章の最後、井筒と佐倉のやりあいは怖かったわ。日記の改竄か。全てがでっちあげではないのかな。そこまでは流石にしない?
 そんなこんなで結局犯人わからずじまい。語り手は一人一人、納得していたみたいだけどさあ。自分にとっての真実を。私は投げたくなっちゃったわ。語り手になった四人は容疑者からはずしていいのかなあ。美津子の妹・杏子や佐倉がかなり怪しいけど、二人が共犯ならできるけど……ああ、ちゃんと考えれば解けるようになってるの? 気になるー。
 山浦美津子、生徒の目から見ると理想的な先生なのに、周りからは全然違う風に見られていて面白かった。純粋すぎる人がうざったくなる気持ち、よくわかるな。桜井先生にかなり感情移入。