Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

麻耶雄嵩『メルカトルと美袋のための殺人』  ★★☆

メルカトルと美袋のための殺人
メルカトルと美袋のための殺人
麻耶 雄嵩
「……本当にそうなのか」顔を上げ、メルカトルを見た。視覚が曇って濡れている。
「このメルカトルが云うのだから間違いはない」
「……そうなのか」

 メル、ひどっ! シリーズを読み進めてきたから分かってたが……傍若無人なんて言葉じゃおさまらないことくらいは。こんなことしてても、どうせああなっちゃうんだぞー(自分もひどい)。タキシードをユニフォームと言い切り、次は真紅のローブがいいなんてほざくメルが、私は好きですよ疑わしく響くけど。
 メルにも美袋三条というワトソン役がいたのね。しかし大分メルにやられちゃっているわ。ワトソン役の中でかなり可哀相な部類だな。麻耶のワトソンは、大変そうだ。香月も……むにゃむにゃ。
 遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる:友達・増岡の恩師・大垣の別荘に来ていた美袋。彼が恋した女性・佑美子が、大垣の部屋で死んでいた。大垣は花瓶で殴られて殺害されていた。二人がいた部屋は密室になっていた。
 化粧した男の冒険:メルと美袋は増岡のペンションへ。その一室で男が殺害されたのだが、その顔には化粧が施されていた。早く帰りたいメルは捜査に乗り出す。
 小人閑居為不善:暇を持て余したメルは、自ら犯罪に巻き込まれることに。依頼を期待して、扇情的なダイレクトメールをめぼしを付けた人に送りつけた。
 水難:二人が宿泊している山中の旅館にはどうやら幽霊が出るらしい。その後“死”と悪戯書きをされた扉を開けると、二人の女性の遺体が。
 ノスタルジア:メルは美袋に小説の原稿を渡し、犯人当てをしろと言う。当てられたら褒美、外れたら罰として美袋名義で掲載……。
 彷徨える美袋:気がつくと見知らぬ場所に放置されていた美袋。彷徨って辿り着いたペンションで殺人事件が起き、彼は容疑者に。
 シベリア急行西へ:シベリア急行で旅行中の二人。同じツアーで来ていた作家が、列車が急停車した前後に殺された。