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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

上遠野浩平『しずるさんと底無し密室たち』  ★☆

しずるさんと底無し密室たち The Bottomless Closed-Rooms In The Limited World
しずるさんと底無し密室たち The Bottomless Closed-Rooms In The Limited World
上遠野 浩平

 飛躍し、循環し、明瞭な結末もない。そして、それは他に喩えようもなく、なんとも――馴染み深い癖に、とても新鮮だ。
 しずるさんも笑い、私も笑う。
 それは世界がどんな天気であろうと、窓の外で何が飛んでいようと、変わることのない実感だと私は思っていた。


 挿絵がいつもと違う人だ。オタク度アップかしら(笑)? 『しずるさんと偏屈な死者たち』に続くシリーズ。密室ものとは言えないような、寧ろミステリとも言えないような短編が四つ。上遠野浩平好きじゃないと楽しめないかもね。
 名前を聞いてもわからないような病で何年も入院しているしずるさんと、どうやら家がかなり有名らしい彼女の友達よーちゃん。しずるさんは得たいの知れない謎めいた事件に興味を持つので、よーちゃんはしばしば情報収集するはめに。
 しずるさんと吸血植物:周りを花が囲んでいる状態で発見されたミイラ。花には無理に後から植えた形跡はない。しかも死んだ人は半日前に生きているのが目撃されている。
 しずるさんと七倍の呪い:巷で流行っているカードゲームの製作者とその家族計七人。うち六人は首を切断され、残り一人はチェーンソーを持った両腕を切断され、密室状態の館で死んでいた。
 しずるさんと影法師:祭りの最中に、救護所テントで寝ていたはずの男が、パレードの列で倒れ、死んだ。しかもその死人は死亡時刻以後に、色んなところで目撃されているのだ。
 しずるさんと凍結鳥人:ビジネス街のスクランブル交差点に、雨の中降ってきたのは凍りついた死体。何故……?
 どれもしずるさんの推理を聞くと、呆気ないなあと思ってしまう。呆気なさ過ぎてどうしようか。

 

 “ごまかし”がどこにあったかを考えていけば、辿り着いてしまうのかもしれないが……。人の入れ替えが多いね。七倍の呪いなんて、薬が出てきちゃうからすごい結末だよ。チェーンソーに倒れこんで自分の首を切っちゃったなんて。おい。まあ、台風で飛んできちゃったってのはもっとすごいけどさ(笑)!