Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

日日日『ちーちゃんは悠久の向こう』  ★★

ちーちゃんは悠久の向こう
ちーちゃんは悠久の向こう
日日日
「あのひとは私と同じ。この世界に価値なんて一ッつも見いだせないひと。可哀相なひと。夢に憧れ、幻想に溺れ、虚構の生贄となるさだめにあるひと」
 やはり――意味がわからなかった。

「幻想は人間を食うわ」

 自分も幽霊になりたいと口にするようになった。
 でもね、ちーちゃん、それは。
 それは、死んでしまうということと何が違う?

 日日日と書いてあきらと読ませる、私と同級生にあたる作家。いやーすごいなあ。乙一もデビューしたのは高校生の時だったけど、まったく、もう……(溜息)解説でも乙一が言及されています。やっぱり若いと注目されちゃうんだなあ。しかも幾つも賞をかっさらったみたいで。デビューしたのは最近なのに結構本出ててびっくり。乙一も、そろそろ仕事してくれ……(笑)
 「ちーちゃんこと歌島千草は僕の家のごくごく近所に住んでいる」――幽霊好きの幼馴染・ちーちゃんに振り回されながらも、「僕」の平穏な日常はいつまでも続くはずだった。続くと思っていた――あの瞬間までは。
怪異事件を境に、ちーちゃんの生活は一八〇度転換し、押さえ込んでいた僕の生活の中の不穏まで堰を切って溢れ始める……。(Amazon
 ライトノベルだよなあ。流れるように読んだ。深く考えなくても追えるからいいね。九月に入ってから一向に読書が滞っていて困っていたのだが、リハビリに最適でした。原因ははっきりしてるんだけどね。町田康『告白』しか、家に未読のものがなかったからだ。私は一度に何冊かを平行して読み進めるタイプなので、その上よりによって『告白』だったので、弟が借りてきたDEATH NOTEに逃げておりました。何回読んでも面白いぞ、あれ。ちなみに期限が切れた『告白』は返却してしまいました。のめりこめなかったんだもの。
 話を戻す。僕・モンちゃんこと久野悠斗の境遇は可哀相とはいえ虐待とか「非日常なんかより日常が幸せ」みたいな考えはよくある。諦めた感じとか、ちーちゃんとの関係も(萌えと言ってしまえるのかな)ライトノベルっぽいなあ、と感じたのだがこれは私のライトノベル読書暦が偏りすぎていることから来るのだろう。てかブギーポップのせいだよな。中に挿絵がなかったのが少しびっくりだ。カバーにも顔は出てないし、持っててもあまり恥ずかしくないかも。制服と長いみつあみがアウトっちゃアウトか。
 「判然」っていう言葉がよく出てきたね。ここんとこ言葉遣いに気を取られすぎちゃう。
 あ、ラストがとってもよかったと思う。活字倶楽部の記事によると編集者には反対されたらしいが、こだわりがあったので変えなかったとのこと。変わってたら評価が断然違ってただろうな。実に私好み(笑)
 しかし後書きは、解説で「ナマイキはぜんぜんかまわないが、謙譲は忘れるな」とある通り、なかなか気に食わない感じでありました。自分も肝に銘じておこう。