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Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

朱川湊人『花まんま』  ★★★☆

花まんま
花まんま
 くすぐったいと言うより、もっと深い感覚――あの生き物から痺れるような何かが伝わり、それが骨にまで染みたような気がする。その痺れに耐えていると、やがて臍下あたりから、何かぬるい水が染み出して来るような……どこか甘い感じさえする、不思議な感覚。(妖精生物)

 え、エロい! 引用した短編はエロスだった(私の感想ですが)。
 気を取り直して。今年度上半期直木賞を受賞した本書。直木賞検索して気づいたのだが、私三崎亜記『となり町戦争』以外既読だよ! うーわーいつの間に。そんなの気にしてなかったのに。どうせならこの勢いでもう一冊読むかな。今のところ、この本が一番無難に直木賞な感じがする。ベルカやユージニアは違うだろうしねえ……。作家の経歴を見たら七人中四人が早稲田出身の事実に驚きを隠せません。
 トカビの夜:文化住宅に住んでいた俺は、朝鮮人の兄弟の病弱な弟・チェンホと怪獣を通して仲良くなった。しかしチェンホは病気が悪化して死んでしまう。それ以降、子供の幽霊が出るようになって……。
 妖精生物:高架下で怪しげな男から買った、クラゲのような妖精生物。砂糖がご飯で、容れ物に合わせて成長するらしい。肌に乗せると、何とも言えない感覚に襲われるのだ。
 摩訶不思議:ツトムおっちゃんの葬儀。霊柩車は火葬場の門の一歩手前で止まってしまった。故障でもないし、皆で押しても動かない。アキラは心残りがあるのだろうと、ピンとくる。
 花まんま:俊樹の妹・フミ子は変わった子供だ。マイペースで自分のやりたいことしかやらず、更には昔、繁田喜代美という人だったのだと言う。
 送りん婆:みさ子の父が働く会社の社長の母親は、『オクリンバァ』と呼ばれていた。死が近い人の家族が『オクリンバァ』を呼び、みさ子はその手伝いをさせられることに。
 凍蝶:蔑まれる人間として生まれてきたミチオは、学校でも居場所がなく、ふらっと霊園に立ち寄った。そこでミワさんという高校生くらいの女性に出会った。
 高度成長期の大阪が舞台の、ちょっと不思議な短編集。ホラー……なのか? ファンタジーと迷ったけれどAmazonでホラーの賞を取ってたみたいなのでそっちに。んーでも別に怖くはないなあ。口当たりがよく読みやすい話だった。万人受けするんじゃないかしら? もちろん内容もよかったです。摩訶不思議のとぼけた感じとか。特に妖精生物はラストも最高に好きだ。私の趣味がよくわかる選択で。