Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

麻耶雄嵩『痾』  ★★☆

痾

麻耶 雄嵩

「メルカトルさん……僕は白鳥になれるのでしょうか」
「白鳥はなるものではないよ」
 微笑んでメルカトルは云った。
「白鳥は白鳥として生まれるんだ」


 これもご都合主義っちゃそうだった。しかし夏と冬ほど理解不能ではなかったし、名(銘)探偵が二人も出演してくれていて、短めの話だったし、読者には優しいのかもしれない。
 大破局(カタストロフィ)のショックで部分的記憶喪失に陥った如月烏有(きさらぎうゆう)は、寺社に繰り返し放火して回復を企る。だが焼け跡には必ず他殺死体が発見され、「次は何処に火をつけるつもりかい?」との脅迫状が舞い込む。誰が烏有を翻弄しているのか? 烏有に絡む銘探偵メルカトル鮎の真の狙いは?(Amazon)いや、わかりやすいあらすじだね……(笑)
 夏と冬の事件と桐璃の記憶をすっかりなくしちゃった烏有。周りの人に、ちょっととっつきやすくなったみたいなことを言われ複雑。……どこかで、同じような話を読んだなあ。全編が烏有の日記形式(しかし三人称)で進む。前作より読みやすかったと思う。キュビズムやら神やらにまつわる小難しい論理がなかった所為かしら。
 ああ、メルカトルも木更津も相変わらずですなあ。翼の事件がこの事件の最中に起こっていたのね。そうか、何だか大変だね皆……どうしていつも麻耶雄嵩の本はハッピーエンドにはなりえないんだ?

 

 絵で殺人を、放火を指示することなんてできるのかな? 烏有くん、もっとしゃっきりしないと! 黒幕は巫女神でしたが。上半身だけ性転換して女性になったわぴ子、まず名前をどうにかするべきだ。わぴ子って……きんぎょ注意報だよな、やっぱり。懐かしい!
 藤岡の、子供の頃命を救ってくれたのは医大生だった、って話、烏有もだったよな? 自分に生きている意味はあるのか、って悶々してたよな? え、違う? もう忘れてしまったよ。
 メルの編集長に対しての意味深な発言やら、木更津の香月への軽い侮辱っぽい言葉やら……何だかどきどきしちゃうね(しません)。しかもメル死ぬし。彼が自分の死を自覚していたとは思えないのですが。
 烏有と桐璃の赤ちゃんか……。