Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

若竹七海『スクランブル』  ★★★★☆

スクランブル
スクランブル
若竹 七海

 子どもだったのだ、どんなに背伸びをしていたとしても。いまになってそれがわかる。そして、多少、いやかなりみっともなかったにしても、あのとき、自意識の強さに押し潰されそうになりながら、それでも走り続ける力を、子どもだった自分たちは持っていたのだ。


 いや……面白い! 彦坂夏見が出てくる本はサンタクロースに次いで二冊目。他にも二冊ほど、あるんですね。あの子がちらっと出てきたりして、にやりとしていました。それにしても、面白いなあ。読み終えた時の感想はああよかった、でした。犯人があの人だったら居たたまれないところだった。
 私立の女子校で17歳の女性が殺された。十五年後、31歳になった文芸部員だった六人が、そのうちの一人の結婚式の最中に、順番に当時を振り返る連作短編集、というか長編小説。女子高生という多感(?)な時期を、あの頃は若くて回りが見えてなかった……と痛々しくも苦笑い。人間は永遠にそれを繰り返すんじゃなかろうかね。
 スクランブル:殺人事件に騒然とする学内。夏見とマナミは担任の殿村に呼び出される。F組で盗難事件が勃発し、犯人に疑われているのは文芸部部長のラビこと宇佐だというのだ。
 ボイルド:参考人として殿村が警察に出頭。スポーツ大会の短距離走選手が階段から転げ落ちたのを、運動神経抜群のマナミのせいだと「アウター」に厳しい生徒たちは言う。
 サニーサイド・アップ:医者に止められスポーツ大会に参加できない洋子は、当日に起こった薬物混入事件の被害者が後輩・小早川だったことに驚き、養護教諭のスパルタにつめよった。
 ココット:沢渡と図書委員をしていた女生徒が轢き逃げされ、死亡した。彼女は親に「夏見と話があるから遅くなる」と言い残していたが、夏見と会う前に学校から帰ってしまっていた。
 フライド:修学旅行の班決め。飛鳥はグループの人数合わせとして、大して仲のよくない女生徒に誘われた。文芸部のメンバーのことを考え、うやむやにするが……。
 オムレット:十一月、文化祭。宇佐は図書室で殺人事件のことを考えていた。すると、夏見が問題が起きたと呼びにきた。図書室から『三国志』の二巻がなくなったと、教師が騒いでいるらしい。
 とりあえず過去の話だけ。少しずつ、現在に戻ってきたりする。まあ、あとはネタバレで。
 『ドグラ・マグラ』にはじまり、『家畜人ヤプー』など、説明されなくても内容が分かるらしい(夏見談)ような小説が出て来るんだけど、何ともはや、私は一冊たりとも読んだ事がございませんでした。残念。
 若竹七海の描く女性が好きなのは、その言葉使いによるところが大きいんだと思う。小説における女性って、結構「~わよ」「~かしら」みたいに、実生活では出てこない語尾が多い(私は好きだし使っちゃうけど)。でも、「~んだよ」「~のか」「~さ」と、ぶっきらぼうな女性が殆どなんだな。かっこいい、ってのとは違うけど。台詞を読むと、若竹七海読んでるんだ~と強く実感するんですよね。

 女子校出身者として、女子校ものを読むと感情移入も激しいが、違うよーとじたばたすることも多い。それとも、中高一貫は高校だけとは天と地ほどの差があるのだろうか。うちの高校も中高一貫になってしまったけどね。こんな恐ろしいところになるの? 周囲にいるのも高校だけ女子オンリーだった、って人が多いからわからない。言えるのは、ある程度頭のいい高校からの女子校だったら、他人との付き合い方がうまい子が多いし、いじめなんてことは生まれない。嫌いな子とは関わらないから。女子があんなにいれば、気が合う子は沢山いる。でも、うちの従姉がそうだったけど、中学とかからあって、途中で入ったら「アウター」まではいかなくとも疎外感はあるらしい。
 女子校にこの本のような面があることは否定しないが、楽しいことはもっと沢山あるのよ。って話。

 

 犯人が飛鳥じゃなくてよかったよ! でも宇佐は、十五年間も彼女だと思い込んでいたんだよなあ……背負う必要のなかった罪を、背負っていたのね。宇佐が「あの頃の犯人は」って言ってたのを再読して理解した。結婚式当日まで、宇佐にとっての犯人は飛鳥だったんだ。
 信川先生か。よくぞ、警察に捕まらなかったもんだわよ。それにしても、生徒に責められ泣きながら教室を出て行った彼女が犯人だったとは。話が進むにつれて、強さも見えてきたけど。飛鳥以外疑わなかったのも納得だ。
 夏見が冒頭でわかった犯人って、信川先生だったのよね? 宇佐が飛鳥を犯人と言った時、血相変えてたし。金屏風の前に仲人も座ってるってことでしょうか。結婚式行った事ないからわからないわ。