Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

金城一紀『SPEED』  ★★★

SPEED
SPEED
金城 一紀
「俺たちを動けないように縛ってるのは信号機じゃなくて、目に見えないもんなんだよ。中川はその操作の方法がうまいんだろ、きっと。でも、俺とか南方とか舜臣とか萱野とか山下は、自分たちの目と頭が正しいって判断したら、赤信号でも渡るよ。で、おまえはどうするよ?」

 久しぶりに金城一紀なんて読んだよ! 過去の読書記録遡っても名前が見当たらない。……おかしいな、『対話篇』『フライ、ダディ、フライ』はあっても良いはずなのに(見落とし?)。とにもかくにも、待望のゾンビーズシリーズの続編。レヴォリューションの時代にはサイン会しても男ばっかりだった、という金城さんですが今やったらおなごも沢山くるんでしょうね。私も行きたいもん。本多さんを作家にした張本人だしね(そこか!)。
 主人公・岡本佳奈子の憧れだった家庭教師、彩子が自殺した。信じられない佳奈子は彩子の同級生・中川に話を聞きにいく。その帰り、三人の男たちに襲われた佳奈子を助けてくれたのは、四人の救世主だった。
 救世主っていうのは勿論、南方・萱野・山下、そして舜臣です。ダディの時にも大活躍だった舜臣、この度もかっこいい。岡田君は切れ長で一重(とまでは言ってない)じゃないし、強そうじゃないから、やっぱり舜臣役は似合ってないと思うよ。腰砕けのアギーやちらっとヒロシの話も出てきて、シリーズ読者としてはおいしい。佳奈子はあの聖和の生徒だし。山下の相変わらずの不幸っぷりもおいしい(笑)
 ダディと大まかな筋は同じなんじゃないでしょうか。他人のために復讐(っていうとニュアンスが違う気もするが)する。主人公の家族が何らかの問題を抱えている、ってのも。爽快なストーリーだった。
 しかし、主人公は男の方がなあ……って思ってしまうのは私が腐っているからだろうか。南方視点が一番好きなんだよね。うーむ。良い意味でも悪い意味でも、女って女でしかないから、爽快さに湿り気を加えてしまうような。
 いずれにしろさっさと読めるので今までのを読んできた人は読めばいいんじゃないかな。