Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

若竹七海『サンタクロースのせいにしよう』  ★★★★

サンタクロースのせいにしよう
サンタクロースのせいにしよう
若竹 七海

「これが自分のものだと言い切れるものを持っていないという点では、わたしだって同じだわ。言い切れるやつなんか、この世にいるかしら。そんなことで人間が自殺するんなら、わたしなんかとっくの昔に三途の川を渡ってる」(虚構通信)

 そう言えばよかった、とわたしは後悔した。ふたりとも信じていると言えば良かった。(子どものけんか)

 後の文章大好き。これから読む人には申し訳ないんだけど、引用させていただきました。まあ流れが分かった上で読めばまた違うのでお許しをば……!
 若竹七海は四冊目。もう少し読んだらベスト3の企画に参加したいです~。本作は「何か軽めのものない?」と尋ねてきた母に先に読ませてみた(まさか『悪いうさぎ』みたいな毒々しいもんじゃねえだろうな、と思って)。私「毒あった?」母「別になかったよ」しかし読んでみたら……あるじゃん! でも毒ばっかりじゃなかったな。こういうのも好き。
 あなただけを見つめる:柊子は失恋し、引越しを決意。タイミングよく友人・夏見から、彼女の友人・銀子が同居人を探しているという電話が入り、柊子は同居を決意。銀子は少年のような美人で丁寧な物腰の素敵な女性だが、有名な俳優の娘で、少々変わっていた。その上、彼女の家の下駄箱の上にはおばあさんの幽霊が。
 サンタクロースのせいにしよう:柊子と銀子のご近所である鈴木さんの奥さんは、行き過ぎた口うるささで周囲の反感を買っていた。他人のゴミ袋まで覗く彼女はクリスマスに、袋の中に動く死体を発見したと騒ぎ立てた。
 死を言うなかれ:銀子の姉・沓子の隣に住む原田さんは草花が好きで、庭には花が沢山咲いているらしい。不思議なことに、ある日庭に出たら一角にあったチューリップのコーナーが根こそぎなくなっていたという。
 犬の足跡:柊子は自分が犬になっている夢を最近よく見る。すると浜田さんの奥さんがコンクリートにつく犬の足跡の話を持ちかけてきた。
 虚構通信:内木田しのぶという女優の卵から電話がかかってきた。一週間前に自殺した銀子の妹・卯子に、香港で殺されかけたというのだ。
 空飛ぶマコト:柊子と銀子は友人・美鈴を尋ねて台湾へ。すると二人の乗った飛行機で、ピンク嬢と金持ち息子が言い争いを始め、スチュワーデスも巻き込まれたようで……。
 子どものけんか:銀子の父親が倒れ、二人の同居は解消されることに。その先日、柊子は夏見と銀子の腹違いの兄・曽我竜郎と公園に花見をしに行ったのだが、目を離した隙に竜郎のビデオが傷だらけになっていた。
 ……つ、疲れた。相当前に読み終えた本のあらすじを書くのって、結構な体力が要るのよね。読み返して面白かったけど。若竹七海、やっぱりすごい! 特にラスト。あんなにハッとくる内容を最後の一文に集約するってのは素敵としか言えません。犬の足跡では微笑ましく、虚構通信ではやるせなく。虚構通信好きだわー。歪んでるなあ。
 柊子は葉村晶にちょっと似通ったところがあるけれど、晶よりは人間的というか、とっつきやすそう。引っ越そうって動機が失恋だしね。ほんのり恋愛がらみだしね。寧ろ夏見かなあ、晶っぽいのは。ずけずけとモノを言うところが。銀子さんみたいなお嬢様、実際にいたら友達になってみたい。覆面作家シリーズをぼんやり思い出してみたり。
 星の数は散々迷いつつも四つに。装丁も可愛いし、ね! クリスマスに誰かがプレゼントしてくれたとしたら、複雑な気分になりつつも喜べそうな気がします。