Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

浅田次郎『蒼穹の昴〈上〉』  ★★★★★

蒼穹の昴〈上〉
蒼穹の昴〈上〉
浅田 次郎
 文句なしに傑作だと思う。真面目な歴史物と思いきや、プリズンホテルなどに通じるユーモアも織り交ぜられていて、最高。
 時は清王朝。糞拾いで生計を立てる貧民の子、李春雲は、百発百中の占星術師、白太太に「あまねく天下の財宝を手中に収むるであろう」という予言を受ける。彼は、進士の試験に及第すると予言された梁家の落ちこぼれの文秀を兄貴分と慕っていた。文秀は回りの期待を裏切り、全ての試験を突破し上り詰める。
 宦官となった春児は、後宮へ仕える機会を待ちながら、鍛錬の日々。西大后を政治から排し、光緒帝の親政のもとに新たな時代を築こうとする文秀。二人は順調に出世し、本の中では十年の歳月を経る。愚帝が続いたため政治は西太后にまかせっきりみたいになっていた清国に投げかけられる波紋。
 実は以前文庫で3巻まで読んだのよ。でも、文句なしに面白かったのにのめりこめなくて、4巻の途中で止まってた。多分字が大きすぎて読むのが大変だったからだと思う。そんなにデリケートな生き物じゃないんだけど。読みきってしまおうとハードカバーを上下巻借りてきましたよ。やっぱり二段組で、この字の大きさの方が進むなあ! 二日で読了。あ、もう一つ気になったのは、文庫だと中国語読みな名前が単行本だと日本語読みになってる事。昔は「日本語読みしたくなる」って言ってたくせに、今は「ウェンシウ」「シュンコイ」「ワンイー」などなど、中国読みが頭に浮かんでくるから不思議。そんなこんなであらすじは前書いたものでした。
 とてつもない大作だよね。あの時代に入り込んでしまえるくらいに描写は丁寧で分かりやすく、登場人物は一人一人立ちすぎる程に立ってる。全てが魅力的。あんな科挙を乗り越えるなんて、どんな天才だよ……そして乾隆帝のIQは幾許だったのか。
 読んで損はない。普通に泣く。