江國香織『すいかの匂い』 ★
すいかの匂い
江國 香織
「目をつぶって」
私が言うと、すずきじんたは素直に目をとじた。私はポケットからボンナイフをだすと、それをひらいてゆっくりと彼の左手に切りつけた。そおっと。
もう少しひっかかるかと思っていたのだが、皮膚はおどろくほどあっけなく静かに切れた。三センチほどの切り口に、すぐにうすく血がにじむ。
読んでいておもしろくない。家庭教師をしている子に借りたくせにこの言い草。すいかの匂い、ってことで入ってる短編は全て夏の話。じっとりむしむしした暑さが伝わってくるよう。そして暗い。何か話全部暗いよ。おもしろくない=エンターテイメント性がないってことなんで、おもしろい人にはおもしろいと思う。解説川上弘美だし(好きなんです)。
どこかで「江國香織は繊細さを全面に押し出していて、その読者も私繊細なのよって言ってる感じがして好きじゃない」という意見を聞きました。江國香織は作品によるあたりはずれが大きい。