Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

井上夢人『プラスティック』  ★★☆

プラスティック
プラスティック
井上 夢人

 ここまで読んできたあなたが、今、どのように感じているか。私の不安はそこにある。
 このフロッピィディスクは、あなたに読んでもらうために作られた。


 信じられないくらい読みやすい。全てが一人称で進むからかな。『オルファクトグラム』が気になってたんだけど、文庫の上しかなかったのでやめて、こっちにしました。それが2001年このミス4位だったと今知った。やべー超読みたい。
 新妻の向井洵子は、自分を騙るもう一人の洵子の存在に気付き慄然とする。その不安をワープロに打ち込むある日、女性の全裸したい発見の記事を目にする。顔面を切り刻まれた被害者の名は向井洵子――自分が殺されたことに驚愕する彼女は再びパニックに陥る。(裏表紙)
 読者が読むのは一枚のフロッピーディスク。そこには洵子をはじめとした何人かの記述が。段々と見えてくる全体像にはびっくり。
 井上夢人岡嶋二人っていうコンビの片割れだったってのも解説読んで知った。とはいえ、岡嶋二人の本読んだ事ないんだけどさ。評判だけ聞いている……そんな作家がたくさん。
 この手の話はきっと幾らでもあるのだろうが、私はあまり読んでいないので良い感じに驚けた。何言ってもネタバレになるので慎みます。すぐ読めてしまうので気になったら読んでみるといいかも。

 

 本多初美=若尾茉莉子、若尾茉莉子=藤本幹也、本多初美=向井洵子、まではわかったけれど奥村恭輔と挙句の果てには高幡英世まで同一人物だとは! 全てが本多初美の中の人格によって書かれていたのか……。最後の本多初美用のファイルが真っ白ってのが良い。余韻。ここまで彼女のファイルはないんだもんね。
 それにしても、多重人格って日本では認められてないんですね。そこらへんはすごく興味があるのでいつか本を探してみようっと。