Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

若竹七海『悪いうさぎ』  ★★★★☆

悪いうさぎ
悪いうさぎ
若竹 七海

 わたしは自分が強い人間だと思い込んでいた。頭もいい、状況に対処する力を持っていると信じていた。
 どうせなら、勘違いしたまま幸せに死にたかった。
 情けなかった。みじめだった。無知と傲慢がもたらした災厄を甘んじて受けるしかない、そんなしょぼくれた存在を、それでも心配しているだろうひとたちにせめて詫びたかった。それもできない。


 『プレゼント』『依頼人は死んだ』の葉村晶シリーズ、初の長編物。あまり期待していなかったのだが、今までで一番楽しめた。短編の方が登場人物が少ない分、理解しやすい(私のトリ頭でも全員を把握できる)けれど、いいわ長編……強いて言えば登場人物紹介をどっかに書いておいて欲しかったなあ……(笑)
 晶は家出少女・ミチルを連れ戻すのに駆り出されたのだが、刺されて入院する羽目に。退院したばかりなのにまたも家出少女・美和を連れ戻せという依頼を受ける。しかし美和は見つからず、事件に巻き込まれた可能性があると見た晶は本格的に捜査を開始。すると二人の友人・綾子の扼殺死体が公園で発見された。次いで出てきたのは<カナ>という名前。彼女は「ゲームはヤバいに決まってるでしょ」と言い残して消えていた。
 とにかく面白かったぞ。色々あって気分が沈んでいる時に読んだのだが、葉村よりはマシだ……! と変な勇気付けられ方をした。踏んだり蹴ったり、刺されたり監禁されたり(それでも「詫びたい」なんて大したもんだ)。回りに男は沢山いるのに浮ついた話もなく(結果的にはなくなって)、もう三十路。……散々だ。結末を知っても納得しきることはできないほど、相変わらず悪意に満ちていて読後感は重い。それでも、面白かったんだよねえ。食い入るように読みました。
 長谷川署長に村木、相場みのり、柴田警部(名前も階級も曖昧。後で調べる!)らといった大事な脇役メンバーにも慣れてきたのに、もうシリーズは終わりかあ。残念だ。すっかりお気に入り作家になっちゃったから、また借りてこよう。

 

  狩だってよ! 人間を! 趣味の悪さにも程があるよ~。しかも兎のマスクまで被せてさ! おいおい……実際にやってる奴がいそうなところが更に気持ち悪い。マスク被ってれば獲物と認識しちゃうのかあ。人殺しでは、ないと……。ミチルと晶が助かって本当によかったよ。ミチルが結構感情移入しやすかったからさあ。
 実の父親に撃たれた美和はどんな気持ちで死んでいったのかしらねえ。あんなに過保護に愛されていたのに。
 『依頼人は死んだ』の首に痣のある男、とかすっきり解決しないままシリーズ完結しちゃったね。もしかしてあれですっきりしてる人もいる? 男=晶? 私には分かりません。解説が必要だ。