Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

五十嵐貴久『安政五年の大脱走』  ★★★

安政五年の大脱走
安政五年の大脱走
五十嵐 貴久

「皆の言う通りよ」
 腕を解いた鮫嶋が履き捨てるようにそう言った。
「済まぬ」
 頭を垂れた敬吾の口からつぶやきが漏れた。野呂老人が話を引き取った。
「済まぬでは済まされませぬぞ」声を張り上げる。「さあ桜庭様、この始末どうやっておつけなされるおつもりか」


 『リカ』以来だなあ、彼の本読むの。『リカ』はデビュー作で、めちゃめちゃ怖かった覚えがあります。今思い出しても怖い。私の恐怖のツボをぐいぐい刺激してくれた。あー忘れたい(笑)
 井伊直弼のはかりごとにより、51人の津和野藩士と姫・美雪が脱出不可能な山頂に幽閉された。直弼の要求は美雪の「心」。男たちは誇りをかけて立ち上がる。命に換えても守らねばならないもの、それは――。(Amazon)一章 井伊直弼の恋、二章 桜庭敬吾の岳、三章 堀江竹人の土、四章 亀井美雪の空、五章 犬塚外記の忠、その後のこと、で成り立っている。これを写しておけば絶対内容忘れない。
 映画『大脱走』を思い出すなあ、と言いたいところだけど私は見たことがないのでした。なので『ロミオとロミオは永遠に』を思い出した。人が逃げる時に考える方法は大抵同じなのかもしれないね。どうにかして逃げるしかないんだから。
 日本史を室町時代までしかろくに勉強していない私は、井伊直弼桜田門外の変を結びつけはしたものの、殺した方か殺された方か知りませんでした。……知らなくても、生きてはいけるみたい。教養が薄い上に記憶力が悪いので時代物はあまり得意ではないし、どこまでが実在の人物だかさっぱりわからないけれど、キャラクターを掴むには充分な情報があって楽しめた。大分砕けた口調だったしね。こういうの沢山読めば、歴史が得意になるのかな。
 姫を想い一致団結する彼らがかっこいい。厳しいヒエラルキーの世界、上の者に命を賭けて忠義を尽くす、そんな生き方が出来るんだねえ。私には出来ない……だからこそ感動して泣くのか。
 桜庭と鮫嶋、犬塚と主膳が好きだなあ。桜庭敬吾は是非、堺雅人に演じて頂きたいなあ! 絶えず笑みを絶やさないそのお姿。鮫嶋との対立が、土方さん(体格違うだろうが)を彷彿とさせる。新撰組(ジャンプ辞書の所為で真選組って出るんですけど)番外編やるみたいですね。関係ないよ。
 ラストがまた素敵。

 

 穴が主膳に露見しても、姫は気球で逃げちゃった! 姫の手習いは怪しかったけど、一人で気球作っちゃうなんてなあ。すげえ。ばてらん→ばるん、てのは無理がありそうだがね。
 アメリカで二人揃って仲よく医院で働いたみたいで、ハッピーエンド万歳! 姫様もお目が高い!