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Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

安部公房『砂の女』  ★★★★

国内文学
砂の女
砂の女
安部 公房
「助けてくれえ!」
 きまり文句!……そう、きまり文句で、結構……死にぎわに、個性なんぞが、何んの役に立つ。型で抜いた駄菓子の生き方でいいから、とにかく生きたいんだ!……いまに、胸まで埋まり、顎まで埋まり、鼻の下すれすれまでやって来て……やめてくれ! もう、沢山だ!

 砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考え付く限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める部落の人々。(裏表紙)
 こりゃすっげえ……面白いわ。砂恐怖症になりそう。読んでて砂が体にまとわりついているかの如く気持ち悪かった。男に心情がとてもよく共感できて、もう……名作ですね。
 台詞がめっちゃ長かったり、リーダー多用していたり、読点多かったりと読みにくいところはあるけども(現に私は読みきるまで大分時間かかった)、流石20数カ国語に翻訳された作品だ。
 ラストもすごい。人間ってこんなんだ。日常から逃げて、でもそれは日常に帰るためというか。どんな環境にだっていずれ慣れる。手に余る自由を与えられても、もてあましてしまう。何事もほどほどに、ってな。