我孫子武丸『8の殺人』 ★
では、どうやったのか? 上からが駄目なら下からか? 中庭から飛び上がる? いやいや、竹馬でも使えばどうだろう。しかしそんな不安定な状態でボウガンが発射できるだろうか? それにそんなことをして一体何になるというのだ?
島田荘司(最近度々島田潔と言ってしまう。現実との境が……)が推薦した四人目の作家、我孫子武丸。好きな書評サイトさんが『殺戮に至る病』『探偵映画』をお薦めしていたんだけど、図書館ではうっかりタイトルを忘れてしまい借りてみたのがデビュー作。評価は、いまいち!
探偵役(?)の三兄妹や、恐ろしく哀れな木下には笑いを誘われたものの、それも最初のうちだけ。段々飽きてきてしまった。おい、木下の扱いが酷すぎるよー。
文字通り8の形をした“8の字屋敷”。この奇妙な建物が殺意を育ててしまった。男は誰も入れるはずのない部屋から放たれたボウガンで殺され、女は閉ざされたドアの内側に磔にされた! 犯罪芸術を目指す犯人と速水三兄妹の華麗な頭脳合戦の果てに二重三重の逆転劇が待ちうける。(裏表紙)
一つ目のトリックは金田一で似たようなのを読んだんだけど……? どうなの? どっちが先? 似てるだけでパクりではないのかしら。『占星術殺人事件』での恨みがあるので、懐疑的にならざるを得ないのである。溜息。どちらにせよ簡単なトリックだったことは確か。
ミステリ初心者の私にとって、密室講義はなかなか面白かった。赤川次郎『三毛猫ホームズの推理』を読もうと思ったし。もっともっと時間に余裕があれば、クイーンやカーにも手を出したいよお。
ユーモアミステリーだと島田荘司が後書きで言っているけれど、私には彼自身の初期の著作の方がよっぽどユーモアだ。いかんせん軽すぎる。折角の館ものでありながら、儚げな美少女が出てくるのだから、もっと重厚でもいいんじゃないかなあ。他のもこんな感じだったら、もう読まなくてもいいな。一冊で判断するのはいくらなんでも危険なので、しませんけど。
金田一にあったのは何だっけ? とりあえず鏡を使ってたのは覚えてる。パクりだのそうでないだのと言ってたら、ミステリなんて読めないの? 「もはや新しい密室のトリックは出ない」わけですか。
二つ目のトリックはトリックでもなく偶然の産物。動機は薄いし、何とも言えない。いちおが推理ミスをし、続いた慎二も間違っていて、やっと真実にたどり着くっていうのはいいと思うんだけどねえ。慎二かっこいいし。