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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

恩田陸『ロミオとロミオは永遠に』  ★★★★☆

ロミオとロミオは永遠に
ロミオとロミオは永遠に
恩田 陸

 先人たちは、自分の子供たちのことなど何も考えてはくれなかった。自分たちさえよければ、自分の孫が野垂れ死にしても平気だったのさ。
 分かっているね? 我々は、どこまでも、救いようのないほど愚かなのだ。
 この愚かさは、死んでも治らない。

 彼らは泥だらけで逃げる。自分たちを愛してくれたもの、自分たちを縛りつけてきたものから逃げるのだ。自分たちを待つ、見知らぬ何かに向かって。いや、彼らは未知そのものに向かって駆けていた。道なるもの、それだけが彼らの目的であり希望なのだ。


 日本人だけが地球に居残り、膨大な化学物質や産業廃棄物の処理に従事する近未来。それを指導するエリートへの近道は、「大東京学園」の卒業総代になることであった。しかし、過酷な入学試験レースをくぐりぬけたアキラとシゲルを待ち受けていたのは、前世紀サブカルチャーの歪んだ遺物と、閉ざされた未来への絶望が支配するキャンパスだった。やがて、学園からの脱走に命を燃やす「新宿」クラス接触したアキラは、学園のさらなる秘密を目の当たりにする……。(裏表紙)
 正直こんなにわくわくする小説は久しぶりだった。バトル・ロワイアル(ちなみに私は大好きである)を彷彿とさせる毒と(褒めている)、二十世紀のサブカルチャーが盛り込まれていた。そしてとてつもないリーダビリティ。五百ページ近いこの物語を一気に読ませる実力は流石。大学に向かう電車の中、どんなに眠くともこれを読めば眠れない! この前『ねこのばば』を読んでて切に思いました。ごめんね畠中ファンの方。
 世俗に疎い上に恩田陸とは世代が違うので、人よりニヤリとする回数は格段に少なかったであろうものの、脱走というテーマは魅力的。しかも舞台は男子校。主要人物の一人は美少年。はっはっは!
 少年達のかたい友情の絆を見せ付けられつつ、この物語にキョウコはいらないんじゃないかなあと思う。バトロワに女がいなかったらつまんないけど、大東京学園には別にいなくてもいいよ(死んでください)!
 ここまでとんでもない設定をつくりだした彼女は天才だよ。こっちが呆れてしまうくらいブッ飛んでる。幻想的な『三月は深き紅の淵を』のシリーズより、ロミオ~の方が断然好きだなあ。『ネバーランド』と並ぶ。ただの男子高生好きじゃないの? という突っ込みはなしにしていただきたい。図星だから。

 

 しかしまあ、二人が脱走に成功してよかった! おめでとう! バトロワの秋也と典子を彷彿とさせるなあ! あの二人よりも強かそうだけど。
 そんな爽快な物語と見るのもいいが、私は人間の愚かさを強く思い知らされたよ。『成仏』とは日本の昭和時代に戻ることだった。二人だけじゃなく、きっと他の新宿クラスのメンバーやキョウコ、ついでにオサムだってこれからの地球をよくしていこうとは考えないんだろうね。あの抑圧された世界にいたんだからそれを求めるのは無理かもしれないけれど、人間ってどこまでも自分本位でどうしようもない種。『Q&A』においても恩田陸は地球を守ろうとするのだって人間の都合だ、なんてこと言ってたし。
 私も最近そんな考えにあぶれてきたですよー。人間よりもその他の全ての方が尊いとは思っているけれど。