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Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

瀬名秀明『パラサイト・イヴ』  ★★★☆

怪奇幻想

パラサイト・イヴ
パラサイト・イヴ
瀬名 秀明

 もうすぐだ。彼女は全身を震わせ、利明の声を、表情を、体温を思い浮かべた。
 利明のような男が現れるのを待っていた。利明こそ、本当の彼女を理解してくれる男だった。絶対に逃すわけにはいかない。
 利明とひとつになるのだ。


 借りた動機は、京極夏彦『どすこい(仮)』。その中の「パラサイト・デブ」という短編のためだけに読んだ。ゲーム化や映画化もされたみたいで(何も知らなかったけど)、随分有名みたいね。第2回日本ホラー小説大賞大賞受賞作だし。
 永島利明は大学の薬学部に勤務する気鋭の生化学者で、ミトコンドリアの研究で実績をあげていた。ある日、その妻の聖美が、不可解な交通事故をおこし脳死してしまう。聖美は腎バンクに登録していたため、腎不全患者の中から適合者が検索され、安斉麻理子という14歳の少女が選び出される。利明は聖美の突然の死を受け入れることができず、腎の摘出の時に聖美の肝細胞を採取し、培養することを思いつく。しかし、"Eve 1"と名づけられたその細胞は、しだいに特異な性質を露わにしていった……。(Amazon
 私は生物が大好きでして、理系に進みたくとも数学の出来が悪かったために諦めた人なので、この手の話は大好きだ。ミトコンドリアや遺伝子についての専門的な記述も正確に理解できたわけじゃないのだが、表面を撫でる程度でも充分に楽しかった。植物と動物が枝分かれして進化していくところとか……ぞくぞくする。
 ストーリー展開としてはとても解りやすく、感情移入できる人物(浅倉)もいたので、想像以上に面白かった。一気に読めるし。幽霊的な怖さではないので読書後に入るお風呂でビビることもなかった(笑)。駄目なんだよな、霊的なものは……排水溝から出てきそうだ、とは思ったけど。

 

 文庫の後ろについている専門用語解説を見ようとして、目に入ってしまった「浅倉は微笑み、そしてオートクレーブのスイッチを入れた」という最後の一文。丁度イヴが浅倉の中に入った時だったので、やっべーこれは最悪の展開で終わるんだ! と覚悟して読み進めたところ、驚いた事にハッピーエンドだった。利明は死んだけど、イヴと子供も消滅したわけだし。めでたしめでたし。