Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

北方謙三『遠く空は晴れても』  ★★☆

遠く空は晴れても
遠く空は晴れても
北方 謙三

「肉体は、どんなにでかくても二メートル。心は無限だ。わかるか?」
「なんとなく」
「嘘をつけ。おまえの頭でわかるわけがない。いいか、ソルティ。肉体が傷ついても、せいぜい二メートル分だ。それ以上だと、死ぬ。心は、無限に傷ついていくのさ。だから、心が傷つくような真似はするんじゃない」


 ハードボイルド! 出たよ北方節! クサイ台詞を恥ずかしげもなく言わせてしまえるこのかっこよさ。あ~読んでいて悶えた。かれこれ半年ぶりくらいなんだもの、北方作品は。心臓に悪い。私も男に夢見てるけど、北方御大はもっと夢見てる。いや、あの人は地でこんなんなのかもしれないけど……。
 夏の海が吼えていた。灼けつくような陽をあびて、私は教会の葬礼に参列した。不意に、渇いた視線が突き刺さる。危険な匂いが漂う男、川辺との出会いだった……。やがて、川辺は芳林会の内部抗争を惹き起こす。だが、奴の標的は別の何かだ。トラブルしか縁がないために「ソルティ」と呼ばれる私は、この街の利権抗争に深く踏み込んでいく――。酒瓶(ボトル)に懴悔する男の哀しみ。街の底に流れる女の優しさ。虚飾の光で彩られたリゾートタウンで、ハードボイルドの系譜を塗りかえる弧峰の大長編小説の幕があく。(裏表紙)(かっこいいなこの文章)
 ソルティという綽名は正直おかしい。てか恥ずかしいだろう。もうちょっと何かなかったの? 若月という名前は充分かっこいいんだからそれでよかったのに。シリアスな場面にはあまりそぐわないような。そう、藤木のあの時の言葉遣いだって……(ブラディ・ドールシリーズを読まれたし。文句なしに名作)。あ、キドニーもそうだね。何人? とか思っちゃったもの。
 まあ綽名は気にしないことにしまして、本編。相変わらず皆様男らしくていらっしゃる。匕首やら銃やらが出てくる。ヤクザに小説家、お高い車、そして海。海好きだよね! 海で黄昏るのかっこいいもんな。でも、やっぱりBDシリーズと比べると……。まだ一巻ですので、これからの発展に期待しましょ。そうそう、BDシリーズと交わるんだった、どこかで。坂井に会いたいです。いつか文庫で十冊揃えてやる。再読してまた泣くのでしょう。
 男も女もひたすらかっこよく、生きていければいいですね……(遠い目)。

 

 川辺死ぬのか! こんなに主要キャラっぽいのに吃驚。これからどうやって展開していくんだろう。BDみたいに新しい人が出てくるのかな? そして立て続けにトラブルに巻き込まれるソルティ? 楽しみです。