Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

山本文緒『ブルーもしくはブルー』  ★★★

ブルーもしくはブルー
ブルーもしくはブルー
山本 文緒
「どうすれば、満たされるんだと思う?」
 彼女は額から手を外し、私の目を見てそう質問した。私はただぎこちなく首を傾げる。
「私達、ちゃんと愛されてたのよ。河見君にも牧原君にも。佐々木さんでさえ、結婚した時はあなたのことが好きだったのよ。それをねじ曲げたのは私達なのよ。愛されてたのに愛し返さなかったのよ、私達」

 後味は悪いのだが、このリーダビリティは評価しないわけにはいかないので星多め。
 広告代理店勤務のスマートな男と結婚し、東京で暮らす佐々木蒼子。六回目の結婚記念日は年下の恋人と旅行中…そんな蒼子が自分のそっくり「蒼子B」と出くわした。彼女は過去の記憶をすっかり共有し、昔の恋人河見と結婚して、真面目な主婦生活を送っていた。全く性格の違う蒼子Aと蒼子B。ある日、二人は入れ替わることを決意した。誰もが夢見る「もうひとつの人生」の苦悩と歓びを描いた切なくいとおしい恋愛ファンタジー。(Amazon
 山本文緒の本は『恋愛中毒』しか読んだ事ないんだけど、この人いつも満たされない女性像を描いてるのかしら。どろどろしていて、最後はきれいじゃない。読んでいて気持ちの良い本じゃない。でも、面白いんだよなあ。
 二人の蒼子は出会ったばかりの頃は仲よしな双子みたいだったのに、入れ替わって暫く経つと恐ろしい程の憎しみが。怖い怖い。サスペンスドラマを見ているようにハラハラしちゃったよ。文庫の解説を書いた人は本作をホラー小説としていましたが、私も同じ。結婚小説っていうより女と女の戦いっていうか、まあ結局は自分との戦いみたいな。
 また気が向いたら読んでみよう。どろどろした気分の時に。