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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

綾辻行人『時計館の殺人』  ★★★★★

時計館の殺人
時計館の殺人
綾辻 行人

「お前にとって時間の本質とは何か、と質問された時、僕はいくらか考えあぐねた末、多分に自嘲的な気分でこう答えざるをえない。つまりそれは、時計の動きであると。この機械によって初めて、僕たち現代人は“時間”を明確な形として捉えることができる」


 ひー! 大好きだ! 今までの館シリーズ通して一番です。後半は一気読み。うわあ面白かった……! 裏表紙にある綾辻行人の写真、眉毛が福井晴敏に似てませんか? あ、すっごくどうでもいい。しかもこれ、十年以上前のじゃない。
 江南は雑誌の取材で、中村青司の遺した時計館に三日間閉じこもることに。メンバーは副編集長と霊能者、W**大学ミス研所属の学生が四人で計七人。鍵のかかった大きな旧館という密室で、連続殺人の幕が開ける。
 一方の島田潔は、行きそびれたミス研の一人と合流した後、使用人に依頼されて新館に泊まりこむ。
 借りた時は長いぞ、と思ったんだけどそんなことはなく! そうだったのね、と大掛かりな仕掛けに感動したのでした。理由がまたいい。犯人を当てることはさほど難しくはないものの、どうしてなのかはなかなか分からないんじゃないかしら。アンフェアなわけではないから、頑張れば真相にたどり着けるのかな。
 次は黒猫館。楽しみ。

 

 誰かが部屋に閉じこもるたび、危ないよ~やめとけよ~と念じてしまう自分。ほら、犯人が入り込んじゃった! なんちゃってホラー気分。こずえちゃんと小早川さんは不運であった。
 そんな仕掛けのある館で殺人が起こるんだから、やはり新参者には難しいだろうし、何となく犯人は伊波紗世子じゃねえの? と予想していたら当たった。もっとも時計五十分で一時間進む、なんてことは考え付きませんでしたが。ついでに由季弥が犯人だっていう推理は麻耶雄嵩あたりのおかげでさらっと流せた。
 娘・永遠(慣れないうちは彼女の名前が出てくる度に「えいえん」と読み、文章おかしいと勘違いしていた)に十六歳の誕生日を迎えさせてあげたいがゆえに、そんな館と時計を作った古峨倫典。彼の行き過ぎた愛情は逆に娘を自殺に追いやってしまうわけで。ちょっと幻想的な親子が切ないな。
 それにしても、いくら娘の死の原因が落とし穴であったとはいえ、ここまで殺しまくるのはすごい。修羅だよ。