Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

島田荘司『御手洗潔の挨拶』  ★★★

御手洗潔の挨拶
御手洗潔の挨拶
島田 荘司
「今は言いたくない。だが今夜、この魂九歳の夜、僕は一人の孤独な魂を、はたして救えたんだろうか? 自分のつまらぬ功名心のため、弄んだだけなんじゃないだろうか?」

 み、御手洗がしおらしい台詞を! 頭撫でてあげたくなるね(やめてください)。御手洗シリーズ初の短編集。どっちかといえば、長編の方が好きだなあ。本領(変人ぶり)を発揮するところまで深くない気がして。
 数字錠:看板会社社長が殺された。死体は数字錠がかかっている扉と、鍵がかかっている上開けると大きな音がするシャッターとで密室になっていた。
 疾走する死者:嵐の夜、停電とともにマンションの11階から飛び出して行った男が、たとえ全力疾走したとしても時間的に辿りつけない線路で遺体となって発見された。
 紫電改研究保存会:とある男が経験した不可解なるもの。七年前、突然会社を訪ねてきた男に宛名書きを手伝わされた後日、「ピサの斜塔救済委員会」というところから覚えのない領収書が送られてきたのだ。
 ギリシャの犬:ギリシャで知り合った男の妹から、たこ焼き屋が盗まれてしまったので探して欲しいという依頼を受ける。調査の最中、妹に預けられていた男の息子が誘拐されたという連絡が入った。
 ……我ながら下手なあらすじで凹みつつ。実は御手洗シリーズを初めて文庫ではなく、ノベルスで読んだのよ! やっぱり二段組みになっているとミステリー読んでる、って感じがするねえ。出来ればこれではなくて、一番初期のやつで読みたいんだけど、見つけられない。島田荘司の古い著作はいかがわしい表紙が多いよね(笑)
 どれも面白かったし、特に御手洗のギターの腕を見せてくれたのは嬉しかった。中でも愉快(?)な「紫電改研究保存会」は『赤毛連盟』を思い起させ、ホームズが恋しくなった。でも、やっぱり長編かなあ。あの壮大さが欲しいのだ。大きな舞台を使ったトリックが!
 次は『御手洗潔のダンス』。短編集ですよね。『暗闇坂の人喰いの木』に進む為にも探してこよう。