Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

有栖川有栖『白い兎が逃げる』  ★★★

白い兎が逃げる
白い兎が逃げる
有栖川 有栖
「謎の血文字が解読できたら報せてくれ。俺も答えが知りたい」
「電話してやるさ。もう年内は顔を会わすことがないかもしれないな」
「その面を見るのも今世紀はこれが最後か。――いい年を」
「ああ、来世紀もよろしく頼む」

 どこを抜き出していいかさっぱりわからずに、自分の趣味に走りました。ごめんなさい。この二人のコンビが大好きなの。そしてまっとうなミステリが。読んだ瞬間、ああ何てフェアなの! と喜びを覚えた。騙されてばっかりじゃ身が持ちません。
 不在の証明:ひったくり犯が隠れていた場所の向いで殺人事件が起こる。彼はそこにいるはずのなかった小説家であり被害者の兄の黒須俊也が見たと証言する。
 地下室の処刑:刑事の森下は非番の日、手配中のテロリスト・小宮山を目撃・尾行するが、逆に捕らえられてしまう。小宮山は地下室で処刑を執行すると言い出したが、その本人は直前に口をつけたワインで死に至る。
 比類のない神々しいような瞬間:評論家の上島初音がオフィスで殺害されていた。彼女は床に「1011」を横にした、奇妙なダイイング・メッセージを残していた。
 白い兎が逃げる:劇団の看板女優・清水伶奈はハチヤと名乗るストーカーに悩まされていた。脚本家・亀井明月と劇団員・伊能真亜子は、ハチヤを振り切る為にゲームをしかけるが、ハチヤはゲームの当日に殺されてしまった。
 も、森下刑事! 地下室の処刑を読み始めわななく私。何てったって火村よりアリスより彼が好きなんだもん。アルマーニのスーツを着こなす関西弁の二枚目。これからもご活躍することをお祈りしています。頑張れ!
 やっぱりどれもこれも安定しておもしろかった。もちろん私は推理できないのでアリスと一緒に悩むだけ。突飛な提案をしたり(的外れなことを言って斬られるばかり)、同業者にライバル心を燃やしたりする彼。かわいいな、おい。助手はいつだってかわいいものなのですかね、ワトソンの時代から。反対に、火村が犯人を追い詰める場面は本当にかっこいい。特に今回はアリス視点だけではなく、指摘される瞬間の犯人の心情がわかるから尚更だ。他人から見る火村。若白髪の似合う渋い助教授の授業を受けたい。
 一ヶ月に一冊は読まないと駄目みたいです。