島田荘司『斜め屋敷の犯罪』 ★★★★☆
斜め屋敷の犯罪
島田 荘司
「あなたもそう言われますか? いずれにしても、これはなかなか凝った犯罪です。そしてわれわれはすでにゲームを始めているらしい。あまりありきたりのやり方で王手を言うのでは、この芸術家に対して失礼でしょうね」
一度全て消えてしまいました。泣く泣く二度目のレビュー。
御手洗シリーズ二作目。『異邦の騎士』を先に読んでしまったけれど、アレならいいだろう。先日参加したミス研のコンパでは誰も彼も新本格を制覇していたみたい。私も頑張るぞー!(とりあえず島田の御手洗シリーズと綾辻の館シリーズだけ)
北海道宗谷岬、オホーツク海を見下ろす高台の上に、斜めに傾けて建てられた「流氷館」。主の浜本幸三郎は、クリスマスの夜、客を招待してパーティを開く。が、その聖夜に密室殺人が……。さらに血も凍るような第二の殺人が! 奇妙な連続密室殺人に挑む名探偵・御手洗潔の活躍を描く長編本格推理の傑作。(裏表紙より)
面白かった! 解説(?)の通り余計な要素がなくてシンプルだからか、占星術のトリックを知っていたことを抜かしても本作の方が私は好きだ。不思議な屋敷(『斜め屋敷の犯罪』を『斜め館の殺人』にしてしまいたくなるほは綾辻行人のせいだ)で起こる密室殺人、奮闘する警察を尻目に鮮やかに事件を解決する探偵……典型的な推理もの。読者への挑戦を受けずにさっさとページを繰ってしまいましたが。
それにしても、何故こんなに喜劇くささが溢れているの? 御手洗登場後はいわずもがな、前も。真剣なシーンもあったけれど、どうしても真剣になりきれない読み手・私でありました。菊岡の好色さに対する警察の方々の非難、「ふうん、頑張るね……」「大した心がけだ」「感心、感心」おかしいよあんたたち! 呆れ果てながら楽しんでるだろ。
遅ばせながら登場した御手洗は、石岡君をひやひやさせつつ相変わらずの言動・行動。シリーズが進むにつれて普通になっていってしまうのがとても惜しまれます。
この奇天烈な建物を考え出した作者を尊敬する。ミステリ作家って大変ねえ……。建物を図にするのも大変だろうに。あ、図を作ってから話を書くのか? トリックがかなり大胆。皆さん仰るように、リアリティを求めてはいけないと思う。
占星術が駄目な人でも、これは大丈夫なんじゃないかしら。
「たとえば文語調で迫るとか、そうだな……『我、汝の息を止めんとす。我の名は復讐、血の色の馬に跨れり』とかね」
「とても綺麗だ!」
この人達漫才コンビですか。何感心しちゃってんのよ御手洗! 今度から石岡君に遺書係を任ちゃえよ。
「ただそれだけのために、この家は傾けてあるのさ」金持ちはやることが違います。つららを14号室のベッドがある位置にぶっさす為だけに、菊岡を殺す為だけに何億がかかってるんでしょうか。好きな台詞に、
「柔らかい手だ。労働をあまりしておられんな?」
すると御手洗はニヤリとして言った。
「ずっと金を握らずにいれば、手の肌も荒れません」
がある。私は御手洗にはなれず、金井のようにへこへこして生きるのかも。所詮金の亡者だから。笑
菊岡はともかく、上田を殺す動機はやっぱり弱いと思うな。いくら自分で手を下したかったとはいえ、可哀相だ。
面白かったからいいけど。さて、次は『御手洗潔の挨拶』ですかね。探してこよう。