Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

村山由佳『BAD KIDS』  ★★★

BAD KIDS
BAD KIDS
村山 由佳

「別にそんなんじゃないのにね。あたしたち、何だかお互いにつらくなっちゃって、それでお互いの手で傷口をふさぎ合ってるだけなのに……」

 愛し合っていないのに行為に及ぶのは間違っているとか、性の安売りだとか言う奴がいる。僕も基本的にはそう思う。思うけれど、でも、一口に愛と言ったっていろんな形があると言いたいのだ。僕と都の関係、これだって男女の恋愛ではないにしろ、まぎれもなくひとつの愛情の形ではあるはずだ。自分のことのように相手を気づかわずにいられない、そういう気持ちを愛情と呼ばずに、いったい何て呼ぶんだろう?



 失礼な言い方をすれば、意外によかった(別に設定だけに惹かれたわけではなく!)。彼女のヒット作であるおいしいコーヒーの入れ方シリーズはちらっと見ただけで嫌気がさしてしまったから。『天使の卵』は終わり方がぷっつり途切れすぎていたし。まあ、本作もぷっつりなんだけど。そういう特徴なの? 『天使の梯子』『星々の舟』くらいは読むつもりです。他にお薦めあったら教えてください。
 20歳も年上のカメラマンとの関係に苦悩する都は高校の写真部長。彼女が絶好の被写体と狙いをつけた隆之は、ラグビー部の同性のチームメイトに秘かな恋心を抱いていた。傷つき悩みながら、互いにいたわりあうふたり。やがて、それぞれに決断の時を迎える。愛に悩み、性に惑いながらもひたむきに生きる18歳の、等身大の青春像をみずみずしいタッチで描く長編小説。(Amazon)(時間がないときは潔く引っ張ってくることにした。書かないよりマシだし、私が考えるより遥かにわかりやすいし)
 隆之、地の文では「僕」なのに会話になると「俺」なのね。都は一貫して「あたし」。「あたし」はちょっと嫌だな。何となくだけど。
 さて、この小説、台詞や内面の吐露がいちいち良いんだよね。全て抜き出したくなる。都の戸惑い、隆之のやり場のない想い、寄り添う二人の暖かさ。つまり文章が良いってことか。べた褒めだな。
 それなのに何故評価が普通なのかというと、やっぱり終わり方が余り好きではないから。そして村山由佳に対する意地だろう(笑)素直に好きって言えないこの気持ち。誰かわかって! ……ん? これ続編があるの? あ、登場人物が違うや。
 そうそう、本作で私が惚れたのはもちろん隆之ではありません。篠原光輝さんです! 眉目秀麗の天才ピアニスト、細いのに筋肉がついていそうな躯、性格も申し分なく、挙句の果てに恋人は男。ひー! こんな幼なじみが、欲しかった……!

 

 そうじゃない。あたしの可能性は、進む道をひとつに絞った先に広がっているのだ。今絞りこまずにいることによって、もしかしたら逆に、その可能性はつぶれてしまうかもしれないのだ。


 大学受験を勧められた都の心情。ほほ~、と納得してしまった。専門学校進学を反対されている方は励まされるのではないかしら。大学行ったからって就職できるわけじゃないし、今の時代。私が卒業する頃には景気がよくなってると良いけど。
 隆之のあの恋の破れ方はよかったと思うの! あれでいいんです。失恋の苦しみが好物です。でも、都はな。赤ちゃんおろすべきだよ。二人で失ったものを埋めあえばいいじゃないの。安易すぎる考えかしら。