Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

あさのあつこ『The MANZAI』  ★★★☆

The MANZAI
The MANZAI
あさの あつこ, 鈴木 びんこ

「なっ、歩、やろうな」
 ぼくだけにむけられた言葉と笑顔だった。悪意などかけらもなかった。
 こいつ、ほんとに、おれのこと好きなんだ。おれといっしょに漫才やりたいんだ。

 本作の続編である『The MANZAI2』が高校図書館の返却コーナーにあり、借りようか悩んでいるうちに卒業してしまったため、母が借りてきてくれた。2はなかったらしい。残念。相当前に読んだので、今回で三回目くらいになるだろうか。あさのあつこといえば今年完結したバッテリーシリーズが有名だが、彼女はかなり多くの児童文学を出版しているのだ。私が読了済みなのはバッテリー、No.6、ガールズブルー、そして本作のみ。いい加減この年になるとこてこての児童文学には手を出せないので、ヤングアダルトばっかり。
 主人公の歩は中学二年の時、母親の生まれ故郷に引っ越してきた。転校して一ヶ月たった日、同じクラスの秋本に『おつきあい』を申し込まれてしまう。泣きたくなった歩だったが、秋本のいう『おつきあい』とは漫才でコンビを組んで欲しいという意味だった。文化祭で漫才「ロミオとジュリエット」を成功させるためにひた走る中学生たち。
 読後感がとてつもなく爽やか。バッテリーやNo.6と同じように、閉じがちな心に踏み込む他人の構図が伺えるけれど、さらに児童文学的というか、わかりやすくあっさりほのぼのしている。バッテリーで感じたような切な痛みを味わいたい人には物足りないかもしれないが、中学生らしいやりとり(自分が中学生の頃とは違うのにそう思える)がかわいらしいので、癒されたい人にはすごくお薦め。
 あさのあつこを読むと、男の子同士ってこんなにまっすぐ向き合ってるのかしら? と考える。そして、まさかね、といつも自分で答えを出してしまう。やっぱり本の中とは違うだろう。女性が書く男性と、男性が書く男性ってのは……難しいな。女性が書く女性は大体が女性そのものだと思うけれど、男性はどうなのか。こればっかりは理解できませんね。
 鈴木びんこの挿絵も好きだ。彼女は後藤竜二『12歳たちの伝説』でも素晴らしいものを描いているので、是非見ていただきたい。
 さて、早く2が来ないかな。予約してきた。