Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

石井睦美『レモン・ドロップス』  ★★

レモン・ドロップス
レモン・ドロップス
石井 睦美

 そして、このごろ、だらしないくらいにやさしいあたしは、真希ちゃんのために祈りさえする。坂口くんが、あたしすら知らない真希ちゃんの美点を見出していて、そして、真希ちゃんのあまりある悪いところも含めて、好きでいてくれたら、と。
 そして、そう祈りながら、こころのかたすみがちくりと痛くなる。
 あたし、どうしちゃったんだろう。

 今月まだ18冊しか本が読めてない、これはやばい、あと2冊だけでも! と変な焦りを感じて手に取ったのは、母が借りてきた字の大きい≪中学・高校生向け≫いわゆるヤングアダルト作品。ハードカバーだけどそこまでハードじゃない(?)カバーが好き。軽いから。
 美希の友達・綾音は電車で見かける男の子に恋をしている。頭もよく美人だけれど、感受性が欠如している姉・真希ちゃんも、ある日デートに出かけていった。同居しているおばあちゃんと死んでしまったおじいちゃんは神様に選ばれたみたいに仲よしだった。駄菓子屋で買ったレモン・ドロップをなめながら美希が考えるのは。
 ほのぼのしていてかわいらしい話だった。出てくる人はみんな好感が持てて、やっぱりかわいらしかった。美希がハイドファンだったのが面白かった。火葬の歌詞をちゃんと味わったことがないので今度カラオケで友達に歌って貰おうと思う。
 別に美希が著しく成長するわけではなく、ぼんやりと人を想うこころを理解していき、あったかいまま終わった。とても印象に残る本ではないけれど、そういえばファーストキスの味はレモン色とか言ったな、なんて思い出せる良い感じの本だった。ちょっぴりくすぐったい。
 蛇足だが、カバーで紹介されていた本6冊中5冊は読了済みだった。森絵都『リズム』・魚住直子『非・バランス』・梨屋アリエ『ピアニッシシモ』・笹生陽子『楽園のつくりかた』。どれもそれなりに好き。中学生時代に読み漁った模様。