Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

瀬尾まいこ『幸福な食卓』  ★★★★★

幸福な食卓
幸福な食卓
瀬尾 まいこ

「佐和子のためなら、相手がアントニオ猪木みたいに強くても勇敢に戦うし、セーラみたいにか弱くてかわいそうな相手でも同情せずにぶっ飛ばすってこと」

「すごいだろ? 気付かないところで中原っていろいろ守られてるってこと」

「もう、仕方ないなあ……。本当は俺、まじで、中原に惚れてるから嫌なんだけど、秘策を伝授してやるよ」

 主人公・佐和子に関わる男性陣がとてつもなくいい男たちでくらくらする。佐和子愛されすぎ。羨ましいよ。『図書館の神様』で好きになった瀬尾まいこは、家族の繋がりを書いた本が多いみたい。どうしてこれ読もうとしたんだっけ? 本の雑誌WEBかな。かつくらかな。ダ・ヴィンチかな。もしくは書評サイトか。
 佐和子は父さんと、眉目秀麗で頭も運動神経も優れた兄・直ちゃんと三人暮らし。母さんは家を出て一人で暮らしているけれど、離婚しているわけではなく、ご飯を作ってくれたりする。変わった家族の形を取っているだけで、仲良しだ。

 大きなものをなくしても、まだあった、大切なもの。
 とっても切なくて、ちょっとおかしくて、あったまる。
 いま最注目の作家が放つ、心にふわりと響く長編小説!
 父さんが自殺を失敗したときも、母さんが家を出たときも、朝は普通にやってきた。
 そして、その悲しい出来事のあとも……。
 泣きたくなるのはなぜだろう?優しすぎるストーリー。

 以上帯より。
 幸福な食卓:春休み最後の日、父さんは父さんをやめると宣言した。仕事を辞めて、大学を受けなおすと言うのだ。
 バイブル:つきあってもすぐにフラれてしまう直ちゃんが今回連れてきたのは、油をお土産にするような香水女・小林ヨシコ。そして佐和子は塾で大浦君に出会う。
 救世主:小林ヨシコは救世主だった。直ちゃんは恋に目覚め、どうにか振り向かせようとする。大浦君と二人一緒に進学した高校で、佐和子はくじにより学級委員に選ばれてしまい、散々な目に。
 プレゼントの効用:大浦君が新聞配達のバイトを始めた。佐和子へ贈るクリスマスプレゼントのためらしい。佐和子はマフラーを編むことにする。
 ぶっちゃけ、ボロ泣き(笑)。久しぶりに本を読んでこんなに泣いたので、★を4つ半もつけてしまった。家族小説であり、恋愛小説でもある。想い合う人たちの間に交わされる会話はとても優しくて、胸がいっぱいになる。引用部分は全て主人公への言葉なんだけど、素敵としか言いようがない。これを読んで何も感じない人とは友達になれない、なりたくないとさえ思った。
 幸福とはあるが、主人公を含め登場人物は皆幸福だとは言い切れない。けれど、最後のあの結末を読み終えてもなお、哀しいや切ないよりも暖かいが勝っていた。素晴らしい。
 食卓、というだけあって美味しそうかつヘルシーな料理もてんこもり。野菜が食べたくなる本でもあった。
 直ちゃんみたいな兄がいたら、私だって「今の直ちゃんってすごく愛おしい。ぎゅってしてあげたくなる。こういうのって近親相姦になるのかな」って言うね。この台詞、直ちゃんも言ってなかったっけ? 幾ら探しても見つからなかったんだけど、私の勘違いかしら。大浦君みたいな彼氏がいたら、愛されてるって常に実感できそう。惜しまれるわ。