Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

島田荘司『占星術殺人事件』 ★★★☆

占星術殺人事件
占星術殺人事件
島田 荘司

「御手洗君、四十年という時間を軽んじちゃいけないよ。凡人だって四十年もかけるなら、ピラミッドの一つくらい作るんだ」
 こういう皮肉っぽいいいまわしが、私が御手洗から学んだ最大のものであろう。
「こんな嫌な事件は見たことがない!」

「朝というやつは、昨日の、絞りかすだ!」


 一つだけ最初に。
 『金田一少年の事件簿』はどうしてこんなにはっきりとパクったのだろうか? 苦情が来て、原作者は否定したらしいがそんなわけがあるか! パクり以外の何物でもないじゃないか! お陰で心から楽しむことができなかった。とても残念だ。ミステリの謎を見破りたい、とは常に願っているが、こんな形では嫌すぎる。本作を先に読みたかった! 悔しい。
 それでは気を取り直して。
 この本を読まずしてミステリを語れないと言われる島田荘司の衝撃的なデビュー作。御手洗シリーズの始まり。御手洗と石岡といえば、ミステリ界だけではなく、腐女子界でも有名であろう。何を血迷ったか『御手洗潔のメロディ』を先に読んでしまった私。激しく後悔。シリーズものはきちんと順番に沿って読むべきだと火村助教授シリーズで痛感したのに! 御手洗が占星術師だとも、石岡君がイラストレーターだとも知らず……。あらすじは文庫の裏から拝借。
 ひとりの画家の遺書から始まった怪事件。内容は、六人の処女から肉体各部をとり、星座に合わせて新しい人体を合成する、というもの。画家は密室で殺された。そして一ヵ月後には、六人の若い女性が行方不明になり、バラバラ死体となって発見される! 四十年前に起こったこの事件の全貌を、ミステリ好きの石岡和己は友人の占星術師・御手洗潔に話して聞かせる。二人が奔走した挙句、辿り着いた結末とは……。名探偵御手洗誕生。
 冒頭が遺書から始まるため、ここで頓挫してしまう方がいるかもしれないが(私も危なかった)、頑張ってほしい。乗り越えれば御手洗と石岡君の面白いやりとりが待っている! 物語の多くは会話で進んでいくから、さくさくと読める。御手洗の破天荒な性格は榎さんを思い出させるなあ。振り回される石岡君はさしずめ関君ってとこか。御手洗が発狂するシーンは吹き出した。石岡君頑張れ、みたいな。
 できればノベルスがよかったのだけど、文庫しかなかった。これがまた字が小さい。のめり込めばあまり意識しないが。それにしても、これだけの壮大な事件をよくぞここまで練りました、と嘆賞したい。いちいち細かい。私は得た情報をすぐ忘れてしまうので、しっかり理解しているのか怪しいところだ。だからトリックが解っていても犯人が特定できなかったんだ(……)。
 さて、次は『殺人ダイヤルを探せ』だ。学校にあったのは文庫だったなあ……綾辻行人人形館の殺人』の後にしよう。
 これはミステリ好きなら外せない云々と言いつつも、私はエラリィ・クイーンを読んだ事がないのだから笑える。海外のミステリなんてホームズしか知らない。

 

 金田一の所為で、誰か一人が生き残っていることは早々に解った。でもそれが時子だったとは、先にも述べた通り解らなかった。もっと、記憶力の良い頭脳が欲しい!! それか全てを忘れて一からこの作品を楽しめたら! どっちつかずだなあ。
 島田荘司は台詞回しが面白すぎる。
「何してるんだい石岡君? 君は僕を笑うべきだ。みんなも笑ってくれたまえ。そこを行く君、僕を笑ってくれたまえ。許す」「君は、名前を名乗った時、相手にどんな字を書くんですかと言われる恐怖というものを、想像つかんだろうなあ……」御手洗語録を作りたいね。
「パンと牛乳!? いいけどそんなものどうするんだ?」
「パンと牛乳……食べる……以外に……どうするんだ?」漫才コンビか。仲良しなお二人さん。