2006-04-02から1日間の記事一覧
いつか海に消え行く―約束の街〈5〉 北方 謙三 「俺は、もしかして一番厄介なタイプの男を同時に二人相手にすることになったのかな」 「心臓に弾を食らえば死ぬ。厄介でもなんでもないじゃないか」 死んで当然の男だ、と私は自分に言い聞かせた。死ぬことで、…
蛇を踏む 川上 弘美 「うそばなし」を書いているときには、顔つきもうそっぽくなり、そんなときに誰かが話しかけてきたりしたら、うそばっかりぺらぺら言うような気がします。 「うそ」の国に入り込んでしまっているのでしょう。 「うそ」の国は、「ほんと」…
愚者のエンドロール 米澤 穂信 「……お前は、お前にしかできないことがあると思うか?」 あまりに問いが曖昧だった。里志は首を捻り、慎重に答えを返してきた。 「何でそんなことを訊くのかわからないけど……過去未来に亘って、世界の全ての地域の人間を集めて…
れんげ野原のまんなかで 森谷 明子 「最初は休憩所で結構。でも足を休めてほっとした人が、ついでに目を上げて自分は魅力的な本に囲まれていると気づいたら、どう? 誰でも自由にうちまで連れて帰れる、レンゲ野原散策の副産物としての、古今東西の素敵な本…