Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

ピーター・ティール『ゼロ・トゥ・ワン』  ★★★

ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか

ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか

 

たとえば、日本が「失われた20年」と言われている間に、世界のイノベーションを引っ張っているのはアメリカ、特に西海岸のシリコンバレーだ。アップルやフェイスブックといった名前がすぐに思い浮かぶけれど、数多のスタートアップが起業しては消えていく世界でもある。
そんな中、次々と成功する企業を立ち上げる起業家集団がある。
オンライン決済サービス・ペイパルの初期メンバーとして繋がりが深く、現在もシリコンバレーで絶大な影響力を持つことから「ペイパル・マフィア」とも呼ばれる彼らは、ご存知ユーチューブ(YouTube)をはじめ、電気自動車テスラ・モーターズや民間宇宙開発のスペースXからイェルプ(Yelp!)、ヤマー(Yammer)といったネットサービスまで、そうそうたる企業を立ち上げてきた。
本書はそのペイパル・マフィアの雄、ピーター・ティールが、母校スタンフォード大学で行った待望の起業講義録である。(Amazon

 講義録だったのか(今更)

 キャズムの前に読んで、面白かったような気はするんだけど、何か強烈に頭に残っていることがあるかというと無い。競争じゃなくて独占を作れってことくらいか。キャズムは我が事として読んだけど、こっちはスタートアップの話が主だから身を入れて読まなかったからかな。〈べき乗則〉が分からなくてググって更に分からなくなったのは覚えている。

 採用が大事だという、あらゆる「ハイテク企業」創始者が唱えていることは耳にタコだが、結局それが達成できないのが一般企業なのであった。エンジニアに向かってセールスの大事さを語りかけるくだりはよかったです。普通っぽくて。笑

 数学の話が理解できなかったのが一番の敗因ではないかと。

リード・ホフマン他『ALLIANCE 人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用』  ★★★☆

ALLIANCE アライアンス―――人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用

ALLIANCE アライアンス―――人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用

 

変化が激しい時代に、従来の終身雇用では時代のスピードに対応できない。優秀な社員も成長できる仕事を求める。このような時代、シリコンバレーで実践されているのが、「アライアンス」という雇用形態だ。人は企業とではなく仕事と契約し、かつ企業とも信頼で結びつく。変化に対応する組織の新たな雇用を提唱する。(Amazon

 ペイパルマフィア繋がりで読んでみました。Linkedinの創業者であるリード・ホフマンによる企業と人との結びつき方についての指南書。著書一冊目であるスタートアップの方は読んでいないんだけど、本書の書きぶりからは、彼自身の思想・関心がLinkedinに結びついているんだなって感じがします。

 すごく短い本で、ホフマンの評伝でもなければ論文調でもなく、実用的な指南書の色合いが濃くて読み応えはイマイチですが、プロパー社員の少ない企業に属する人事的目線からは有用ではないかしら(わたし自身は人事ではない)。

 終身雇用を前提にせず採用活動をするなら「次の会社で何をしたい?」と採用面接時に質問するのはとても面白いし、尋ねるべきだと思う。「次」を見据えている人は、経歴書を立派にするために真面目に仕事をするはずなんですよ。笑 ゴールじゃなくて通過点、くらいに考えてもらった方が推進力のある組織になりそう。終の住処のつもりじゃ、人は怠けるよ(ブーメラン)。コミットメント期間、特に若年層に取り込みたいねー。

 うちの会社も「一度離れて戻って来るのは歓迎」と経営陣が言いながらも、「卒業生」と会社との交流は個人間に限られているので、これも定期的に関係性をアップデートできる仕組みを考えるべきなんだね。中途採用はギャンブルに近いから。

 まあ一番は優秀な人しか採用しないってことなんですよ!! どの人も口を揃えて繰り返すんだよ、優秀な人しか採るな、辞職願いを出されたら慰留したい人だけ残せって。でも、不景気だからって採用を控えると後々組織のピラミッドのバランスが悪くなるって言うよね。だから毎年一定数は採っておけと。でも新卒採用をコンスタントにするということは、特に知名度の無い中小企業にとっては、大して優秀だと思えない学生にも内定を出すってことでしょう。日本みたいな流動性のない社会では、あるいはシリコンバレーのスタートアップ企業みたいなきらびやかさのない企業では、なかなか難しいことですよね。

アシュリー・バンス『イーロン・マスク 未来を創る男』  ★★★★

イーロン・マスク 未来を創る男

イーロン・マスク 未来を創る男

 

驚異的な頭脳と集中力、激しすぎる情熱とパワーで宇宙ロケットからスタイリッシュな電気自動車まで「不可能」を次々と実現させてきた男――。

シリコンバレーがハリウッド化し、単純なアプリや広告を垂れ流す仕組みを作った経営者ばかりが持てはやされる中、リアルの世界で重厚長大な本物のイノベーションを巻き起こしてきた男――。

「人類の火星移住を実現させる」という壮大な夢を抱き、そのためにはどんなリスクにも果敢に挑み、周囲の摩擦や軋轢などモノともしない男――。

いま、世界がもっとも注目する経営者イーロン・マスク公認の伝記がついに登場!

イジメにあった少年時代、祖国・南アフリカから逃避、駆け出しの経営者時代からペイパル創業を経て、ついにロケットの世界へ・・・・・・彼の半生がすべて明らかになります。(Amazon

 面白かったです!

 お恥ずかしながら彼の名前全然知らなかったんですけど……すごい……教養と一般常識の欠如しまくった人間で申し訳なくなるんですけど、面白かったです。例によって、この手のCEOの評伝読むと、最高に優秀な人材を集めた上で24時間働けますかの世界なので、下々の者は野たれ死ぬのでしょうか、って気分になるけどエンタメとしては面白いです。SFの世界を実現している。

 ボリューム的には物足りなく、せめて1.5倍は欲しかったが、1971年生まれの44歳なら致し方無し。名前で検索したらこんな記事がアップされたばかり。数十年後に亡くなったら分厚いのが出るでしょう。笑 宇宙ビジネスの「欧州」ってフランスメインなんだね〜。

hbol.jp

 火星移住をリアルに目指すスペースX、電気自動車テスラ太陽光発電と、ペイパル以降に作った会社は一貫性がありますね。その前はドットコム企業って感じだけど。いや十分すごいのだけど。アイアンマンのモデルとなったのも知らなかったです、すごいね。心無しか名前も似ている。

 ドットコム時代で気になったの、電書30%前後のLinuxMicrosoft論争を「こんなことで揉めるなんて、部外者にとっては馬鹿馬鹿しく見えるが」って、読者のリテラシーを低く見積もりすぎだろう! 「宗教戦争のようなもの」と仰せの通りだよ!笑

 本文中にゲイツジョブズとの比較があり、ベゾスとの確執も描かれていたけれど、後者二人の激しさとかなり共通する部分が(文章からは)伺えて、既に代替わりしたAppleはまだしも、AmazonとスペースX・テスラについては後継者育成がとんでもなく大変そう。いくら若いと言ってもそろそろ始めている……のだよな?

 今の時代当たり前なんだけどさ、今さっき読み終えた本に書かれている人のTwitterが読めるのって不思議な感じだ。笑 いや至極当たり前なんだけど、マスクの公式アカウントがテスラ電気自動車を宣伝しているのを見て、現実……と思ってしまった。小説を読む気持ちで読んでいるからか。

 次はせっかくだからペイパル繋がりのリード・ホフマン読みますw 全部弟の本だけどあの子全然ITではない割にはIT関連ばっかり買ってる。わたしは残念ながらエンジニアにはなれなかった(頭が悪かった)が、分野としては好きなので有難い。

ジム・コリンズ『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』  ★★★★

ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則

ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則

 

ごく普通の会社が、世界有数の経営者に率いられた超一流企業に勝るめざましい業績をあげるまでに変身した。全米1435社の中から選ばれた傑出した業績を長期間持続させることに成功したジレットフィリップ・モリス、キンバリー・クラーク、ウェルズ・ファーゴ等の飛躍を遂げた企業11社をそれぞれの業種で競合関係にある企業と詳細に比較・分析した結果、飛躍したこれらの企業には共通した以下のような特徴があった。

●飛躍を導いた経営者は、派手さやカリスマ性とは縁遠い地味なしかも謙虚な人物だった。その一方で勝利への核心を持ち続ける不屈の意思を備えており、、カエサルやパットン将軍というよりは、リンカーンソクラテスに似た思索する経営者であった。

●飛躍を導いた経営者は、最初に優秀な人材を選び、その後に経営目標を定める。目標にあわせた人材を選ぶのではない。

●飛躍を導いた経営者は、自社が世界一になれる部分はどこか、経済的原動力は何か、そして情熱を持って取り組めるものは何かを深く考え、必要とあればそれまでの中核事業を切り捨てる判断さえ下す。

●劇的な改革や痛みを伴う大リストラに取り組む経営者は、ほぼ例外なく継続した飛躍を達成できない。飛躍を導いた経営者は、結果的に劇的な転換にみえる改革を、社内に規律を重視した文化を築きながら、じっくりと時間をかけて実行する。(Amazon

 面白かった、んだけど、一作目の方が初めて読んだのもあってエンタメ的なインパクトがあったかなー。こういう書籍をエンタメとして消化するんじゃないという苦言は受けますが、やっぱり読んでて楽しい方が読書体験として上じゃない?

 毎度のことながら調査にかける時間と手間が半端ない。前作は六年、二冊目は五年ですか? 調査対象会社を選び出す手法の時点でわたしは目眩がしたし、その後の調査やインタビュー項目の多さには気が遠くなってほとんど読んでません。本文だけ読みました。

 肝心の内容は、言われてみれば、ものすごく目新しいことを言っているわけではない、と思うんですよ。第五水準の指導者概念については、カリスマ指導者が目立つ現代のIT企業と引き比べて意外に感じられるんだけど、ごくごくまっとうで納得できる論点ばかり。しかし著者が述べているように、この全てを満たすのはまず無理であって(と言ってしまう時点で駄目なのだが)、うちの会社なんてボロボロだよお……後継者育成まったくできてないけどどうするのか。

 まずはRight peopleをバスに乗せるんだ、っての一つとっても難しいですよね。いるのかなうちの会社に。結局人の地頭や性格といった後天的に身につけるのが難しい部分が大事になってくるじゃないですか。でも凡人にもできることはあるはずなんだ。Right peopleを手放さずに済む制度設計とか……何か……。

 43%目あたりに出てくる奥様のエピソードに笑いました。可笑しかったんじゃなくて、すごい人の周りにはすごい人が集まるんだなって意味で。優勝おめでとうございました。

 次何読もうかなー。同じくベゾスお勧めの『イノベーションのジレンマ』を読み終えておくか。

ジム・コリンズ、ジェリー・ポラス『ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則』  ★★★★★

ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則

ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則

 

3M、IBM、ディズニーなど時代を超え際立った存在であり続ける企業18社を選び出し、設立以来現在に至る歴史全体を徹底的に調査、ライバル企業と比較検討し、永続の源泉を「基本理念」にあると解き明かす。(Amazon

 誰もが読んでいる本に対しておもしれー! とか言うの教養の無さ丸出しで恥ずかしいんですけど、すごく面白かったです……。ハウツー本ほど軽薄でなく、学術書ほど重くもなく、エンタメとしても読めます。本文中には難解なことが書かれていないので本当誰でも読める。

 経済系書籍をほとんど読まないわたしが本書を知ったのはAmazonのベソス伝記に愛読書として上げられていたから(感想)。ベソス本ではAmazonと同じく小売のウォルマートの話もたくさん書いてありましたが、ビジョナリー・カンパニーの例に使われていたくらいだったんですね、ウォルマート。

 わたしの教養レベルの低さのせいで、企業リストを読むだけでも面白かったし(3Mがマイニングから始まってたとか知らなかったよ)、HPやIBMの話は、最近読み終えたジョブズ本で(ジョブズによって)滅茶苦茶言われていたのを思い出して面白かったですね。この本1994年にアメリカで出版だもんな。20年前だよ。

 しかしAmazonAppleが顧客第一主義をこれでもかと掲げていること、Google(の従業員個人)が基本理念に沿ってプロジェクトの取捨選択をしていること等、今をときめく色んな会社に参考にされているんだ〜と思いました。そこらへんの新興企業がどんな後継者育成をしてくるのかも楽しみですね! ベゾスもジョブズもワンマンだったからあまり成功しているようには見えないので……。

 あとは自分の今の会社の状態と引き比べて今後どうすればいいんだろうと考えたりしていました。今所属している部署、前上司だったときは絵に描いたようなワンマンで、彼がいなくなったら分かりやすく断絶が発生したのだけれど、それは後任者のせいだけではなく(後任者のせいも確実にあるんですよ笑)、彼が己がいなくなった後の組織作りをしてこなかったことに原因があったんだなあと。現在の上司は組織作りに主眼を置いていて、それは評価できるのだけど、にしても当事者意識が薄すぎ――これ以上はやめとこ。笑 あと本社で後継者育成が全然できてないとかね、痛いところたくさん突かれていたわ。さすがに管理職レベルは意識してるんだろうが、意識だけじゃどうにもならないのよねー。とりあえず管理職対象にこの本使って研修したらどうか。笑

 日本人としては、ソニーとケンウッドがアメリカ企業以外で唯一登場したことにちょっとした嬉しさを感じてしまいますね。ソニーの音楽事業についてはやはりジョブズ本でけちょんけちょんに言われていたし、VAIO切り離したり何やらで日本の電機系は暗雲しか見えないですけど……。

外市場を視野に入れなければ、井深氏や私が思い描いているような会社にすることはできない、と強く感じるようになった。われわれとしては、日本の製品は品質は悪いという外国での評判をどうしても変えたかった……(盛田昭夫他『MADE IN JAPAN』)

 現在の「安かろう悪かろう」代名詞とも言える中国在住なので、色々と思うところもあり。日本製品が中国において安心・安全と見なされ、特に子供に使うオムツや肌に直接塗布するスプレー等を「爆買い」されているのは、ソニーをはじめとする日本企業が品質改善に取り組んで来た結果なんですね。まさに今、中国も頑張っているよね。国内用に高品質炊飯器を作ったり、美的が東芝の白物家電部門を買収したりさ。

 次の『飛躍の法則』の方が有名みたいなので、引き続き読んでみます。

エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ『How Google Works』  ★★★★

How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス)  ―私たちの働き方とマネジメント

How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス) ―私たちの働き方とマネジメント

 

グーグルは、この方法で成功した!
グーグル会長がビジネスの真髄を初公開!
序文はグーグルCEO兼共同創業者のラリー・ペイジが執筆。

■グーグル現会長で前CEOのエリック・シュミットと、前プロダクト担当シニア・バイスプレジデントのジョナサン・ローゼンバーグは、グーグルに入社する以前から経験豊富なIT業界のトップ・マネジャーだった。だが、2人が入社したグーグルは、「他とは違ったやり方をする」ことで有名だ。これは、ビジョナリーであり、人とは反対の行動をとりがちな共同創業者2人、ラリー・ペイジセルゲイ・ブリンの方針に沿ったものだった。

■入社してすぐにエリックとジョナサンは悟った。グーグルで成功するには、ビジネスとマネジメントの方法をすべて学び直さなければならない、と。本書では、著者2人がグーグルの成長に貢献しながら学んだ「教訓」を豊富な事例とともに語る。

■テクノロジーの進歩は消費者と企業のパワーバランスを激変させた。この環境下では、多面的な能力を持つ新種の従業員――スマート・クリエイティブ――を惹きつけ、魅力的で優れたプロダクトを送り出す企業だけが生き残れる。戦略、企業文化、人材、意思決定、イノベーション、コミュニケーション、破壊的な変化への対応といったマネジメントの重要トピックを網羅。

■グーグルで語られる新しい経営の「格言」(「コンセンサスには意見対立が必要」「悪党を退治し、ディーバを守れ」「10倍のスケールで考えよ」……など)やグーグル社内の秘話を、驚異的なスピードで発展した社史とともに初めて明かす。

■すべてが加速化している時代にあって、ビジネスで成功する最良の方法は、スマート・クリエイティブを惹きつけ、彼らが大きな目標を達成できるような環境を与えることだ。本書は、ただその方法をお教えするものである。(Amazon

 面白かったですよー。すごい面白かった。わたしがまったくスマート・クリエイティブでも何でもなく、今後どうやって生きていけばいいのかな……と遠い目になってしまうところを覗けば。笑

 エンジニアリング系企業の経営層が書く本読むと常にそう思いますよね。エンジニアではなく優れた経営感覚およびキャリアも持っていない人間には生きる道があるのかしらって。2016年現在、何の専門性も無い三十路女性でもごく普通の生活をできておりますが、あと30年以上働かないといけないわけだからね。どうしよう。

 本書内でも言及されていた、同じくGoogleのラズロ・ボック『ワーク・ルールズ!』、わたしも事前に読んでいたので重複している箇所が多々見られました。特に採用について、いかに重きを置いているかというのがよく伝わりました。まあ難しいよね。Googleほどの企業であればスマート・クリエイティブを採用できる可能性はぐんと上がるけど、ぱっとしない企業にそういう人が来てくれることってそうそうないよ。……と言い訳をしているあいだに差がついていくものなんでしょうけど。ジョブスの伝記でもまったく同じ話を読んだけど。

 AppleでもGoogleでも社内の人材交流を活発にするためにオフィスの設計が考えられていたね。これだけインターネットが発達して遠隔勤務やネット会議ができるようになった今、その流れを強化牽引してきた企業であっても、直接会って言葉を交わすことによる化学反応を重要視している、人の脳味噌のクリエイティビティを信じている……つまりそれだけの何かを生み出す社員のみ採用しろということ(堂々巡り)。

 79%(電子書籍で読んだのでページがない)のところで各業界のハブ都市が挙げられていた中に、日本が一つもなかったことを真剣に考えないとまずい。ここはあらゆる意味で他国企業や人を引き付ける場所ではない。

 色んなところで引用されるトヨタ自動車ってやはりすごい会社なのねえ。

ウォルター・アイザックソン『スティーブ・ジョブズ Ⅱ』  ★★★★

スティーブ・ジョブズ II

スティーブ・ジョブズ II

 

ジョブズiPodの中身は?デザインスタジオで「3年先の未来を見る」、「宇宙に衝撃を与える」製品の開発秘話、禅、京都、イッセイミヤケを愛する日本通、はじめて明かされた家族との私生活、何度も命を落としかけた壮絶な闘病、終生のライバル、ビル・ゲイツとの最後の対面、政治改革から新社屋まで、亡くなる直前まで情熱を注ぎ続けていたもの、最後のカリスマ、ジョブズのすべてが明らかに。(Amazon

 春節開けだったかな読み切ったの……既に内容忘れてるんだが、読みましたというメモだけ。

 全体的に面白かったのだけど、今でも覚えているのは、ジョブスに寄り添い自伝を書くことを託されたこの作者自身がTIMEの編集長をつとめたこともあるスーパーキャリアで、超ど級のスマート・クリエイティブ(『How Google Works』より)の周りには同類が集まるんだわ、ということでした。読み終わった後の著者紹介が一番の驚きだった。笑

 あとゲイツとの関係性が最高にやおいでした。びっくりするわ。

皆川博子『双頭のバビロン』  ★★★★☆

双頭のバビロン〈上〉 (創元推理文庫)

双頭のバビロン〈上〉 (創元推理文庫)

 
双頭のバビロン〈下〉 (創元推理文庫)

双頭のバビロン〈下〉 (創元推理文庫)

 

世紀末ウィーンに生まれた貴族の血を引く双生児、ゲオルクとユリアン。だが、前者は名家の跡取りとして陸軍学校へゆき、後者は存在を抹消され、ボヘミアの廃城で世間から隔絶され育てられる。やがて、ある事件からゲオルクは故郷を追われ、野心と欲望の都市ハリウッドで映画制作の道に足を踏み入れるが……動乱の1920年代、西洋と東洋の魔都で繰り広げられる、壮麗なる運命譚。(Amazon

 いや〜面白かった。面白かったねー。もはや面白いとしか言いようがなかったよ。

 でも『開かせていただき光栄です』シリーズよりはわたしの中では下かな。単純にあっちの方が自分のBL嗜好に合っていたからです。あと「皆川博子だから面白くないはずがない」「わたしの好きな読書家の人がべた褒めしていたから確実だ」とハードルを上げまくって臨んだせいもあるかも。笑

 この小説の冒頭は上海から始まるんですけど、何を隠そうわたしの現居住地でありまして、ああこういう雰囲気わかる〜!! と興奮してしまった。やはり知っている土地の風俗が出てくると面白いんですよ。行ったことがあるのとないの、更に住んだことがあるのとないので、全然感じ方が変わって来るからな。

 相変わらずの時代考証盛り込みまくりっぷりで、その上実在の人物まで混ぜ込んできて、教養の無いわたしはどこからどこまでが史実なんだ……と迷いまくりでしたが、上海マフィアの話は面白かったね〜。さっきから面白かったしか言ってない。ヨーロッパ側の出来事ももちろん面白かったよ。たくさんの知識を元によりいっそう深く調べまくって書いているんだろうなあ。

 BL嗜好としては、まずは双頭の二人に萌えないと始まらないじゃないですか。でもわたしあんまり兄弟・双子ものって……ハリー・ポッターのウィーズリー双子以外はピントこないんですよね……笑 まあ一番ガチなところは別なわけだけど。それはきちんと萌えたけど。

 いかにも小説っぽいものが読みたくなったら読むといいです。

岸見一郎、古賀史健『幸せになる勇気』  ★★

幸せになる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教えII

幸せになる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教えII

 

人は幸せになるために生きているのに、なぜ「幸福な人間」は少ないのか?アドラー心理学の新しい古典『嫌われる勇気』の続編である本書のテーマは、ほんとうの「自立」とほんとうの「愛」。そして、どうすれば人は幸せになれるか。あなたの生き方を変える劇薬の哲学問答が、ふたたび幕を開ける!!(Amazon

 前作はおおいに楽しんだのですが、このテンションが二度目であるのと、飛行機遅延待ちながらのメンタル最悪コンディションで読んだせいで、イマイチ楽しみきれませんでした。あ、申し訳ないけどエンタメBLとして読んでます。先生と青年のすったもんだを楽しむもんだと思ってます。アドラーの教えよりもそっちが気になる。

 ちょいちょい吹き出しかけたとこはあるんだけどね、「ふふふ、相変わらず人のことをボロ雑巾のように扱うのですね」なんて言われた日には笑うしか無いよね。古賀さんはセンスあると思いますよ(何様)。でもやはり、青年の生い立ちを明らかにしていき傷口をえぐりまくる前作のインパクトには勝てないじゃないですか。勝てないですよ。

 別離で終わらせるのはよかった。最後まできれいなBLだった。

津原泰水『たまさか人形堂それから』  ★★★★☆

たまさか人形堂それから (文春文庫)

たまさか人形堂それから (文春文庫)

 

「玉阪人形堂」を祖父母から譲り受け、店主となった元OLの澪。今日もこの小さな店には人形に関する様々な難題が持ち込まれる。赤いマーカーの汚れがついてしまったリカちゃん人形、髪が伸びる市松人形、盲目のコレクターが持ち込んだ「小田巻姫」の真贋―。人形と人間の不思議な関係を円熟の筆で描く、人気シリーズ第二弾。(Amazon

 文庫化おめでとうございます! 帰国時ちょうど発売してたので買ってきました。

 津原さんに関しては盲目的に好きだし何度も読み返しているので今更言うことはないのだが、短編のラストでいちいち泣けてしまう。好きです。冨永くんが復活する続編をお待ちしております。